ブルーバックス
『古代日本の超技術 改訂新版』
あっと驚くご先祖様の智慧
志村史夫=著

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1000年耐え抜く傑作を遺した、先人たちの発想と技術――。

 東京スカイツリーの制振装置にも使われた、「倒れない五重塔」の秘密。驚異の湿度調整能力で家屋を守る古代瓦。名刀「正宗」の切れ味は、半導体顔負けの多層構造がカギだった! 奈良の大仏の古代銅や、朽ちない釘に重要な役割を果たした“不純物”とは? 縄文人はアスファルトを利用し、レーザーをしのぐ穿孔技術をもっていた!

 現代のハイテクを知り尽くす半導体研究者が自ら体験・実験して見抜いた、古代日本が誇る、自然を活かしきった匠の技のすべて。渾身の古代技術探究で不動の人気を誇ったロング&ベストセラーに、最新の研究成果を加えた待望の改訂新版登場!

はじめに

 本書は、一九九七年に上梓したブルーバックス『古代日本の超技術』の「改訂新版」である。旧版は初版刊行以来、一五年間で一二刷を重ねた。出版物の「生命」が日増しに短くなっている現在、拙著がこれほどまで長い期間、読み継がれたことを著者として素直に嬉しく思う。

 現代文明の支柱は、いわゆる“ハイテク(高度先端技術)”であり、その一つは紛れもなく、半導体材料を基盤とするエレクトロニクスである。このエレクトロニクスを煎じ詰めれば、指先に乗るほどの大きさの“マイクロチップ”とよばれるものに行き着く。このマイクロチップが、現代のありとあらゆる機械や装置、システムの中で頭脳的な役割を果たし、インターネットに代表される情報社会の基幹を担っている。

 私は、結果的に、このようなマイクロチップに結びつく半導体材料に関する研究に、日本とアメリカでそれぞれ一○年ずつ従事してきた者である。それは、この分野の科学・技術が急激に発展した一九七○年代から九○年代にかけての時期であった。

 いい時期に、いいテーマの研究に従事できたおかげで、私はこの間、いろいろな国に招かれる機会に恵まれた。歴史探訪を趣味の一つとする私は、その都度、そこ、あるいは近隣の地にある遺跡、美術館、博物館、歴史的建造物を見て歩いた。たとえば、エジプトの大ピラミッドの前に立ったときには、その形の美しさと大きさに圧倒された。マチュピチュの、カミソリの刃一枚ですら入り込む余地のない石組みに驚かされたこともある。

 古代人の仕事ぶりを見るたびに、私はいつも「当時の人たちが、よくこんなすごいものを造ったものだなあ」と感心したものである。しかし、いまにして思えば、あの時代の人間だからこそ、あのようにすばらしい、高度の芸術・技術作品を造り、遺すことができたのであった。

 一九九三年の秋に日本に帰国してからは、国内の遺跡や古刹(こさつ)などを何度も訪れている。