官々愕々
「電力改革」の大ウソ

 安倍政権が、「電力システムの改革方針」を閣議決定し、新聞には「発送電分離」の見出しが躍った。しかし、今回の決定には、「電力会社の既得権は全て守る」と書いてあることをご存知だろうか。

 まず、まえがきの中にある、「電気事業に携わる者の現場力や技術・人材といった蓄積を活かす」という文言。これは、改革をしても、電力大手の破綻やリストラは避けますよという意味だ。

 次に電力小売りの自由化。気になるのが電力料金だ。自由化しても独占状態がすぐになくなるわけではないから、電力会社による「値上げ」自由化になっては困る。そこで、料金規制を「経過措置として継続する」のだが、諸悪の根源である総括原価方式については何も触れず、抜本見直しの議論をうまく回避してしまった。

 最大の目玉である発送電分離はどうか。検討段階では、その法案を「'15年通常国会に『提出する』」となっていたのに、閣議決定では「提出することを目指す」との表現に変わった。霞が関文学では、「法案提出に向けて頑張れば、結果的に法案提出ができなくてもいい」という意味になったのだ。

 そもそも官僚達は、実施時期が「'18年から'20年を目途」と書かれた時点で安心していたはずだ。衆参両院の選挙が'18年まででも最低3回、'20年までなら最低5回もある。その間に雲散霧消、と彼らは考える。「目途」が付加されてあいまいになり、おまけに「目指す」となった。ここまでの骨抜きは珍しい。

 実は、閣議決定の中に「発送電分離」という言葉は出て来ない。「法的分離の方式による送配電部門の中立性の一層の確保」と書いてある。発電会社と送電会社を一つの持ち株会社の下に置くという意味だ。関西電力が、関西電力ホールディングスという会社になりますというに過ぎない。本来は、発電と送電の所有を分離して完全に独立した別会社にすべきなのだが、それはやらない。改革の途中で、「方式を再検討することもあり得る」と書いて、さらに後退させる道まで残した。

 また、「いわゆる公益事業特権や税制等について・・・・・・必要な措置を講じる」として、今認められている特権は維持すると宣言した。加えて、電力会社が発行する社債だけは特別に保護するという恐ろしく過保護な規定があるのだが、これも事実上継続すると決めた。

 さらに驚いたのは、「原子力政策をはじめ・・・・・・何らかの政策変更等に伴い・・・・・・著しい不利益が生じる場合には・・・・・・必要な政策的措置を講じる」という文章だ。これは、原発の安全規制が厳しくなったことに伴う電力会社の負担増を税金或いは電力料金でまかなうことを認めるというとんでもない話だ。悪乗りも甚だしい。

 今回決まった改革の第1弾、広域系統運用機関(送電の公正を確保する組織)の設立は、'15年目途。それまでは、電力会社が様々な嫌がらせで他企業の参入を邪魔することができる。これでは、有力企業による大規模参入は望めない。「成長戦略の柱」という触れ込みも結局は画に描いた餅となる。

 こんないい加減な改革案が出てくるのは、今でも電力会社に天下りを受け入れてもらっている経産省が改革案を作っているからだが、肝心の電力事業の規制権限については、「独立性と高度な専門性を有する新たな規制組織へと移行」と書いただけ。経産省の出向者で固めた新組織ができることになる。

 経産省と自民党がやる限り、電力改革はいつも形だけ。国民はまたしても騙されることになるのか。無力感だけが残る閣議決定であった。

『週刊現代』2013年4月20日号より

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