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佐々木俊尚 × 岩佐琢磨(CEREVO代表取締役) 【後編】
「ネットベンチャーのように家電ベンチャーが一人でもできる時代がやってきている」

[左]佐々木俊尚さん(ジャーナリスト)、[右]岩佐琢磨さん(株式会社CEREVO代表取締役)

※この対談は2012年11月に収録したものです

【前編】はこちらをご覧ください。

1分以内に返答がないと、もう取引する気にはなりません

佐々木: 岩佐さんは、ものづくりのパーソナル化は進まないと思ってるのですか?

岩佐: 2つの方向性があると考えています。個人がものづくりをするようになる流れがひとつ。もう一つは、大手のメーカーだけが物を生産していた時代が終わり、マーケットのニーズに合わせたニッチな商品をたくさんつくるメーカーがどんどん現れるという流れです。

佐々木: 確かに、岩佐さんのお話を聞いていると、一気にものづくりがパーソナル化するよりは、スモールビジネス化していくほうが現実味があるし、可能性もあるように思えます。

岩佐: 『メイカーズ 21世紀の産業革命が始まる』の著者クリス・アンダーソンも、結局スモールビジネスを展開しているんですよね。CNCや3Dプリンタ、ECでの部品の調達、インターネットを介した海外の業者への発注など、新しいものづくりの方法を組み合わせると、スモールメーカーが迅速にものづくりできる時代になってきたんです。

佐々木: 『メイカーズ』を読んだ人の「3Dプリンタ買わなきゃ」「いますぐキックスターターで出資してもらおう」という熱狂的な反応に違和感があったんですよね(笑)。そうか、まずスモールメーカーが来るのか。納得しました。

岩佐: 3Dプリンタが救世主、というのは言いすぎだと思います(笑)。でも、メーカーとして起業しようとする人にとって、3Dプリンタはすごくいい装置だと思いますよ。僕らが実際、3Dプリンタで何をしているかというと、ガワをまず3Dプリンタでつくってみるんです。

 そうすると、金型が合わなかったからつくり直し、という事態を防げます。しかもつくってみると、ここが割れやすいから補強しようとか、コネクタはこっちについていたほうが使いやすいなとか、いろいろわかります。

佐々木: 実機を、その場でつくれてしまうんですね。

岩佐: 実機とまったく同じ素材は使えないけれど、かなり近似した素材は使えます。高価な3Dプリンタは陶器のような材質や金属も成形できますよ。

佐々木: それが普及してきたら・・・。

岩佐: おもしろいことになると思います。また、技術が進歩するだけでは、メーカーが普通に利用するまでには至らない。それには、サプライチェーンが必要なんです。いま、中国の内陸部に、小さな工場で、CNC装置3台ほどで加工を行う企業が何十社、何百社と現れてきています。

佐々木: へえ、そうなんですか!

岩佐: 日本でいうと、町工場ですよね。僕と同年代か、もっと若い社長が10人以下の従業員で、日々CNCでものを削ってるんです。こういうところに頼めば「あいよ、わかった!」とすぐにやってくれる。そういう工場がたくさん現れて初めて、僕らもCNCの技術を日常的に使えるようになったんです。

佐々木: 日本の工場ではダメなんですか?

岩佐: 日本だと、まだコストがかかりますね。高級オーディオのつまみや、F1マシンの部品など、特殊な用途のものをごく少数削りだすところがほとんどです。

佐々木: そういう小ロットの生産を受けてくれるCNCの工場は、どうやって見つけているんですか?

岩佐: 3つ方法があります。ひとつは付き合いのある香港人のコーディネーターに紹介してもらう。2つ目は展示会に足を運んで、自分で仕上げがきれいな業者を見つける。もう一つが、中国のBtoBオンラインマーケットプレイスのアリババドットコムで、直接取引先を探す方法です。

佐々木: 探すって、どうするんですか?

岩佐: まず、サイトでCNCの加工をしている業者を探します。それで、チャットで「これくらいのものをつくってほしいんだけど、できる?」って英語で聞くんです。

佐々木: チャットですか。

岩佐: そうすると、大丈夫なら「OK!」って返ってきて、「じゃあ3分以内にデータを送るよ」と言うと、「1時間で見積り返すね」と戻ってくる。

佐々木: 展開が早いですね。

岩佐: で、300~400ドルくらいで試作を1個つくってもらうんです。よくできていれば、何百個と発注します。

佐々木: クラウドソーシングですね。マッチングビジネスというか。

岩佐: アリババドットコムで高い評価を得ているサプライヤーは、営業時間中、ずっと専任のスタッフがチャットのために待機していますからね。"Hi! "とメッセージを送ると、30秒以内には"Hi! "と返ってきますよ。逆に1分以内に返答がないと、もう取引する気にはなりません。

佐々木: すごいスピード感!

岩佐: これは、何かトラブルがあった時の対応の早さにもつながっています。しかも、日本企業のように「まずはお打ち合せから」「用途について対面でお聞かせください」というような、まどろっこしさもないんです(笑)。このスピードに慣れてしまうと、もう戻れません。

佐々木: やはり、グローバルで競争しているゆえのスピードなんでしょうね。

岩佐: 送金もインターネット経由で30~40秒で終わってしまう。送ったら1分くらいで確認の返事が来て、「今から作業に入る。納品は3日後」という感じですよ。

佐々木: それは、日本企業は勝てないですね。トラブルはないんですか?

岩佐: いっぱいありますよ。安価で依頼したら、ろくな品質のものが上がってこなかったということもよくあります。でも、そういうことがあっても、全体でかかるコストはやはり低いし、今後も海外の業者に依頼したいと思っています。

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