純白の政策委員会が真っ黒に!? 黒田日銀の「オセロゲーム」に見る専門家とサラリーマンの違い
〔PHOTO〕gettyimages

 4月4日、黒田日銀がスーパー・サプライズを放った。株価は安値から500円以上高くなり、為替もただちに2円50銭以上円安に振れ、債券の長期金利は前日比で0.125%低い(価格は高い)0.425%と過去最低を更新した。

 インフレ目標「2%」を「2年」で達成するために、マネタリーベースを「2倍」。この三つの「2」を4月4日にやってのけたのはお茶目だ。2を三つ掛けても、4と4を足しても「八」、どちらも末広がりだ。

 もっとも筆者は黒田日銀のやったことにはまったく驚かない。本コラムの読者であればご存知のとおり、「2%」については3月4日の本コラム、「2年」については3月11日の本コラムに書かれている。

 「2倍」についても、1年で見れば70兆円のマネタリーベースの増加になるが、これも1月21日の本コラムで「(インフレ率)2%程度まで高めるためには、60~80兆円の量的緩和が必要になる」と既に書いている。

 この金額は過去のマネタリーベースとインフレ予想率の関係から算出したものだが、名目成長率と金融緩和の関係を示すマッカラムルールで算出してみても似たような数字になる。

審議委員は専門家ではなくサラリーマン

 筆者は、こうした数字について、過去に何度も岩田規久男日銀副総裁と議論してきた。だから、黒田総裁や岩田副総裁がそのように考えていることは知っていた。

 ところが、筆者をもっとも驚かしたのは、6人の審議委員全員が賛成にまわったことだ。かつてバーナンキFRB議長と話をしたとき、彼は「政策変更はとても大変で、辛抱強く説得し続けたり、審議委員の入れ替えを待たなければならない」と語っていた。

 政策決定の変更は合議制なので、議長一人が代わっても思うようにはならない。バーナンキは、持論であるインフレ目標の導入までに、途中にリーマンショックを挟んだものの、6年間も辛抱した。政策決定会合の審議委員はいずれも金融政策の専門家のはずであるが、専門家というのは簡単に他人の意見に左右されないから専門家なのだ。

 なお、バーナンキが議長就任後にインフレ目標を導入しなかったことから、日銀関係者から、「バーナンキは現実を知り意見を変えた」というデマが流されたことがある。筆者はバーナンキ議長がインフレ目標の導入を諦めるはずはないと知っていたから、どうということはなかったが、日銀関係者のデマに騙される人も中にはいた。

 いずれにしても、黒田日銀は見事に「オセロゲーム」で勝ってしまった。黒が3つ入っただけで、白6つを黒6つに変えてみせたのだ。たった1ヵ月の間に、白川日銀が黒田日銀に代わって、白がすべて黒に変わったのだ。

 黒田体制の見事な統率力に脱帽するとともに、審議委員6人は一体何なのだ、とも思ってしまう。いずれ議事録が公開されるが、今まではまったく逆のことをいっていたはずなのに、たった1ヵ月で豹変するとは如何なものだろうか。

 筆者の感覚でいえば、彼らは頑固な専門家ではなく、協調性のあるサラリーマンなのだ。サラリーマンは、上司から意に沿わないことを命じられても何もいわずに従うのが仕事だ。せいぜい、どこかの飲み屋で愚痴をいい合って憂さ晴らしでもしているのだろう。

 正直にいえば、6人の審議委員のうち3~4人ぐらいは意見を変えると思っていたが、まさか全員がコロッと変わるとは予想していなかった。というよりも、専門家であれば全員が変わるはずはない、と思い込んでいた。結果が違うのであるから、「専門家であれば」という前提が誤りであったといわざるをえない。

この続きは、プレミアム会員になるとご覧いただけます。
現代ビジネスプレミアム会員になれば、
過去の記事がすべて読み放題!
無料1ヶ月お試しキャンペーン実施中
すでに会員の方はこちら