アベノミクスが引き起こす財務省の地殻変動---かつて「雑局」と蔑まれた国際局と理財局がエリートコースに!?

 霞が関でよく使われるフレーズ「省の中の省」とされる財務省(真砂靖財務事務次官・1978年旧大蔵省入省)でいま地殻変動が起きつつある---。このフレーズに即して言えば、「局の中の局」である主計局が、これまで同省のスーパーエリート育成部局であった。

 一例を挙げよう。自民党一党支配の55年体制崩壊の契機となった93年の非自民連立の細川護煕政権誕生後、当時の小沢一郎新生党代表幹事と斎藤次郎大蔵事務次官(59年)が謀って「国民福祉税」導入を企図・失敗したことがあった。

 その斎藤氏は「10年に1人の大物次官」と言われたが、まさに主計畑のエリートコースを歩んで事務次官に上りつめた。主計局公共事業担当主計官 → 主計局総務課長 → 官房文書課長 → 主計局次長 → 官房長 → 主計局長 → 大蔵事務次官。「主計局に非ずんば大蔵官僚に非ず」という時代であった。

キーワードは「国際通貨マフィア」

 財務省は3月29日付の人事異動で、アジア開発銀行(ADB)総裁に転出した中尾武彦財務官(78年)の後任に古澤満広理財局長(79年)、古澤氏の後任に林信光財務総合政策研究所長(80年)を充てた。同時に、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)交渉の国内調整総括官に起用された佐々木豊成官房副長官補(76年)の後任に古谷一之国税庁長官(78年)、古谷氏の後任に稲垣光隆関税局長(80年)がそれぞれ就いた。

 この中で注目すべきは古澤財務官である。官房審議官(国際局担当)から国際通貨基金(IMF)理事を経て昨年夏の人事で理財局長に就任した時点では、中尾財務官の後継有力候補は山崎達雄国際局長(80年)と見られていた。逆転人事である。キーワードは「国際通貨マフィア」である。

 古澤氏は、国際局(旧国際金融局)時代のキャリアで言えば、共に同局総務課長を歴任しているが、山崎氏と比較すると国際畑としての華々しさがない。ところが、在仏日本大使館参事官時代に知り合ったフランス人女性を妻に持つ上に、IMF理事時代の3年間にワシントンで築いた国際金融マフィア人脈が高く評価されたのだ。

 ここにも、実は"黒田効果"が反映しているのだ。「アベノミクス」の3本の矢の一番目「金融緩和」の象徴が、日本銀行の黒田東彦総裁(67年)の誕生であった。そしてそれが見事に奏功した。たとえ当面とは言え、である。

 4月4日の日銀金融政策決定会合で想像を超えた量と質共に大幅緩和を決めたことで、東京株式市場の日経平均株価は1万3,000円台をクリアした。外国為替市場でも円安はさらに進み、一時1ドル=96円36銭まで突入した(両市場共に5日午後3時現在)。

 この株高・円安が何時まで続くのか、誰も決定的な御託宣を述べられないが、それでも黒田日銀体制下の壮大な実験が始まったことだけは確かである。安倍晋三首相の国会答弁「(新日銀総裁は)国際金融マフィアの中のインナーとなる能力も重要である」(2月8日の衆院予算委員会)がポイントであることを、筆者は繰り返し指摘してきた。

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