ドイツ
キプロスとEUの茶番劇を演出する政治と金融の根深い癒着
ATMから預金を引き出すキプロス市民 〔PHOTO〕gettyimages

 破産の危機に陥ってEUを震撼させたキプロスという国は、地中海に浮かぶ島で、有名な脱税天国だった。キプロスが脱税天国になったのは最近の話ではない。この国はすでに70年代に、ヨーロッパ、アフリカ、中東の真ん中という地の利を生かして、スイスとまではいかなくても、リヒテンシュタイン並みのタックスヘイブンになろうとした。

 91年にソ連が崩壊すると、金持ちのロシア人がキプロスにやって来た。汚れた金を隠すのに絶好の場所だった。まもなく郵便箱だけの幽霊会社が4万を超えた。

 2004年にキプロスがEUに加盟し、2008年にユーロが導入されると、キプロスの価値はさらに上がった。キプロス政府は富裕ロシア人を優遇し、ロシア人はキプロス籍を取り、EU市民としての権利を享受できるようになった。現在キプロスに投資されているお金のうち、少なくとも198億ユーロ(約2兆4000億円)がロシアからの資金だという(次に多いのがイギリス)。

 ・・・と、こういう話を、われわれ一般市民は今まで知らなかったが、しかし、金融関係者はもちろん、政治家は知っていたはずだ。マネーロンダリングを生業とし、ロシア人の不法所得でジャブジャブしている国を、なぜ彼らはEUに加盟させ、しかも、素知らぬ顔でユーロ圏に取り込んだのか? それを思うと、今さらながら、EUに対する不信感は募る。

一般市民の小口預金に手を回した大統領

 いずれにしても、キプロス経済は、銀行資産が経済規模の7倍以上に膨れ上がり、バブル景気で潤ったが、そのお金を利回りのよいギリシャ債権に投資していたため、ギリシャの金融危機をまともにかぶった。

 ただ、ギリシャとキプロスは、元々兄弟分のような関係だ。言葉も同じなら、人間も同じだし、ギリシャへの投資が危ないことはわかっていたはずだ。ドイツでさえ、2年ぐらい前から時々、"キプロスが危ない"という報道はあった。ただ、我々一般市民は、キプロスなど小さな国だし、しかも、危ない国なら他にもたくさんあるということで、それらのニュースをぼんやりとやり過ごしてしまった。

 3月に入ってから、突然、「今月末までにEUが援助しなくてはキプロスは破産だ」と、ニュースで大騒ぎが始まった。またしても裏切られた気分だった。なぜ投資家は今まで素知らぬ顔で、大金を右から左へ黙々と動かし続けていたのだろう。

 EUは救済の条件として、キプロスに、預金として持っているお金のうちから58億ユーロを拠出させようとした。"ロシアン・マフィアの黒い金を少し放出しろ"ということだ。しかし、大統領はロシアの顧客に遠慮し、58億ユーロの調達のため、一般市民の小口預金にも手を付けようとした。そして、国内で大非難が巻き起こると、今度はそれを非情なEUのせいにした。

 一連の交渉の間、アナスタシアディス大統領の態度は誠実とは言い難かった。抜本的な改革なしで、どうにかうやむやに切り抜けようとしているのが顕著だった。私の目には、大統領は、"キプロスが破産すれば、困るのはあなたたちでしょ"とEUを脅しているようにさえ見えた。心の中で、"知っていたくせに何を今頃?"と呟いていたのかもしれない。

 結局EUは、脅されたにせよ、脅されないにせよ、多くの妥協を呑み、キプロスを救済させていただいたのである。

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