前泊博盛(沖縄国際大学経済学部教授)氏がスクープした外務省の極秘文書、『日米地位協定の考え方』の存在
佐藤優直伝「インテリジェンスの教室」号外(2013年4月4日配信)より
【佐藤優直伝「インテリジェンスの教室」号外 目次】
―第1部― インテリジェンス・レポート
 ■分析メモ(No.24)「ロシアのイラクとシリアに対する攻勢」
―第2部― 文化放送「くにまるジャパン」 in 沖縄 発言録

「佐藤優直伝『インテリジェンスの教室』」文化放送「くにまるジャパン」 in 沖縄 発言録

邦丸: 今日の『くにまるジャパン』は沖縄県那覇市にございますROKラジオ沖縄の第1スタジオから生放送でございます。私と佐藤優さんはこの沖縄から、近所のおばちゃんハイサイ佳子アナウンサーは文化放送でお留守番ということです。

伊藤: はいっ!

邦丸: 今日は佐藤優さんのお隣にスペシャルゲストをお迎えしております。沖縄国際大学経済学部教授の前泊博盛(まえどまり・ひろもり)さんです。

 『本当は憲法より大切な「日米地位協定入門」』という前泊先生が共著でお書きになっている本がありまして、このなかで佐藤さんが非常に注目すべきところがあるよということでした。

佐藤: 304ページから305ページです。これは新聞記者時代に前泊先生が中心になって外務省の秘密文書「日米地位協定の考え方」を手に入れるんですね。外務省の文書というのは、なんの指定もしていない「ヒラ」、外部の人に出してはいけないけれど秘密文書ではない「取扱注意」、次が秘密文書の「秘-無期限」──「秘」で期限がつくものもあるんですけれど、それは合意発表文の期限前のものです──、その上に「極秘」というのがあるんです。「極秘」には二通りあって、何部発行して何番目が誰のところにいったかということを記録する「極秘」と、記録していない「極秘」があるんです。

前泊先生が入手したものは、ちょうど真ん中ぐらいの文書で、外務省員だったら「必要ですから見せてください」と言えば誰でも見ることができる。しかし、外部に出してはいけないという文書で、これが外部に出たらかなり深刻なんですね。

前泊先生の本の304ページから305ページにはこう書かれている。

(「日米地位協定の考え方」の)全文スクープの後も外務省は「日米地位協定の考え方」を頑として認めませんでした。しかし、琉球新報の取材班はこの執筆者を探し当てることに成功します。当時は匿名にしていましたが、もう公表していいでしょう。その人物とは執筆当時、外務省条約局条約課の担当事務官だった丹波實氏。その後ロシア大使などを歴任し、既に外郭団体に天下っていた、その丹波氏のもとに取材記者を向かわせ、証言を得ることに成功しました。2004年1月9日のことです

これは爆弾情報ですね。今、このラジオを聴いて、内閣情報調査室と外務省は、「丹波さん、こんなことを話したのか。今日、報告書をつくらなければならないぞ」ということになりますから。

邦丸: 「日米地位協定の考え方」という文書をロシア大使などを歴任された元外務省の丹波實さんがお書きになっていた。その全文を当時、前泊先生がいらっしゃった琉球新報が入手した。

前泊: はい。

邦丸: 丹波さんに実際にお会いになって、「日米地位協定の考え方」について聞いているんですが。

佐藤: そのシーンですが、

──丹波さんは地位協定に詳しいと聞いたんですが。

丹波 私は安保課長を3年やってね、1978年から80年だったかな。四つの大きな事件があって大変だった。地位協定に詳しかったのは条約局時代だな。かなり勉強した。沖縄返還協定とか基地問題を担当しましたからね。

──「日米地位協定の考え方」という文書があるらしいですね。

丹波 そうそう、よく知っているね。あれはね、僕が書いたんだよ。昔、共産党が入手して国会で取り上げたことがあってね。省内でも流出させるやつがいるんだな

外務省の幹部が、共産党に外務省が文書を流出させたということをはっきり認めた。これも非常に重要な情報です。

邦丸: 「日米地位協定の考え方」の全文が琉球新報に出ているわけですよね。

前泊: 最初に報道したときに、外務省は「ない」と。

邦丸: こんな文書はそもそも存在しないんだと。

佐藤: 嘘つきですねぇ。

前泊: 報道後、横浜の弁護士さんがこの文書について情報開示請求をしたんですが、それでも「NO」と言ってきたので、これは困ると思った。僕らはもう報道していますから。そこで、モノはこれですということで、全文を新聞に掲載したんです。そうしたら外務省のある方から連絡があって、「外務省にも数冊しかないものを20万部も印刷してばらまくというのはどういうことですか」と・・・・・・。

佐藤: 数冊しかないというのはウソ。少なくとも数十冊あります。この文書はコピーが自由にとれますから。ですから、何十万部出たって大騒ぎする話じゃない。そもそも共産党に抜けている文書なんて、これはもうとんでもない話です。

邦丸: お書きになった丹波さんに、あらためてどういうことなのか聞いているんですね。

前泊: 実はこの前段があって、取材はもちろん拒否されるわけですね。ダメだ、会えないと。それで「名刺交換だけでも」ということで彼に会いにいくんです。すると、最初は「知らない」「コメントできない」としか言わなかった。そこでモノを・・・・・・。

邦丸: モノ!

佐藤: ブツですね。

前泊: モノはこれなんですけど、と言って見せたら、「おおっ、懐かしいな」と本人が思わず手に取ってしまった。

邦丸: そんなズルズル、アリですか。

佐藤: 前泊先生、なんでこのタイミングで丹波さんのお名前を出すことを決意されたんですか。

前泊: 彼が話している中身を読んでみるとわかると思いますけれど、地位協定の改定の話をしても誰も絶対にのりませんという話をすると、彼は「もし自分にチャンスがあるのであれば、階級を2ランク下げてでも、それにチャレンジしたい」と話しているんです。

邦丸: ところで、「日米地位協定」は、その言葉はよく聞くんです。じゃ、日米地位協定とはなんぞやというと、非常に話が長くなるわけですが、前泊先生、ざっくり言っちゃうとどういうものなんですか。

前泊: 日本の敗戦によって米軍が進駐軍として日本に駐留します。つまり、占領軍が日本にいたわけです。講和条約を結ぶと、主権を回復したということで占領軍は撤退しなければならないわけですけれど、ところが講和条約を結んだあともいる。その「いるための条件」というのが日米地位協定です。この地位協定を結ぶことによって、日本に占領軍がそのままいることがオーソライズされてしまった。占領政策を延長させるために結んだ協定ではないか、と私は受け止めています。

邦丸: 戦後70年近く経っても日米地位協定によって実際、アメリカ軍の基地が日本には数多くあります。沖縄は日本の国土の0.6%しかないところに74%の基地がある。おかしいじゃないかということなんですが、丹波さんがお書きになった「日米地位協定の考え方」という文書は・・・・・・。

佐藤: 要するに、こういうことなんですよ。「日米安保条約」をエクセルのようなアプリケーションと考えていただければいいと思うんですね。パソコンにエクセルが搭載されていても、マニュアルがなければ使えないじゃないですか。そうすると市販の「エクセルのわかりやすい使い方」を読む。「日米地位協定の考え方」はそういうわかりやすいマニュアルのようなものですよ。この条約をどういうふうに読むのか。どういうふうに解釈するのか。あるいは、ここは日本にとって都合の悪いところだからバレないようにしようとか。

前泊: 逐条解説書ですね。

佐藤: 外務省がよくつくるんですよ。たとえば、これで丹波さんの名前が出たでしょ。外務省は今、あわてて対外応答要領っていうのをつくるわけです。丹波さんが2004年1月9日に琉球新報に会って「日米地位協定の考え方」という文書をつくったことを認めていたんですか、と質問されたら――

1.ご質問の報道については承知している。2.外務省としての立場を述べることは差し控えさせていただく。3.やったことについてどう評価するかということについては、丹波氏は現時点で外務省を離れている人なので、離れている人のことについては言えない。ただし、丹波氏を含め、国家公務員法第100条によって国家公務員は退職後も守秘義務を負っている

――ということを言って、丹波さん、もうしゃべるなよと牽制する。こういうような文書をすぐつくるわけですよ。

邦丸: なるほど。エクセルは最初からパソコンに入っているけれど、使い方についてはよくわかっていない。その使い方が書かれた文書。

佐藤: 昔あったスーパーマリオの裏マニュアルみたいな感じですね。・・・・・・

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