テレビ界は地デジの「高音質」を生かせるか!? 音にこだわり抜いた「ビクタースタジオ」にみる打開策とは

 フジテレビの音楽プロデューサーが、自分の番組では"口パク"を受け入れないとブログで宣言して、話題になっている。口パクとは、番組に出演した歌手が実際には歌わず、口だけパクパクと動かすことを指す。

 この音楽プロデューサーとは、きくち伸さん(50)。『僕らの音楽』『新堂本兄弟』『MUSIC FAIR』を担当しており、フジの音楽番組の総司令官役にあたる。過去には吉田拓郎(66)の担ぎ出しに成功し、KinKi Kidsと一緒に『LOVE LOVEあいしてる』(1996年~2001年)の司会をさせた。テレビ界の誰もが認める実力者だ。

 きくちさんの番組には拓郎のみならず、大物歌手が続々と出演しており、音楽界での信頼が厚いことをうかがわせる。フジの音楽番組を背負っているだけでなく、今のテレビ界を代表する音楽プロデューサーと言えるだろう。

 そんな人物の発言だけに、物議を醸し、「生で歌わせるのは当たり前」と拍手を送る向きもあれば、反対に「アイドルに生で歌わせるのは無理。視聴者も望んでいないのではないか」と疑問視する声もあるようだ。

 ただ、せっかく2011年7月の地デジ化で、高画質のみならず高音質も実現したのだから、テレビの音をこのままにしておくのは惜しい。

地デジ化によって得た「高音質」という武器

 テレビ黎明期から制作者たちは絵(映像)にこだわり続けてきた。テレビの音響担当者たちもプロフェッショナル揃いではあるが、アナログ波時代の音声はどうしたってCDやFMラジオよりも劣っていたため、音は後回しになりがちだった。1978年にはアナログ波でのステレオ化が実現したが、音楽番組を堪能するに値する音質とは言いがたかった。

 アナログ波からデジタル波に変わったことで、テレビ局側から送信できる情報量は格段に大きくなり、今ではハイビジョンの高画質映像を見ることも可能になっている。だが、「高音質」のほうは生かし切れているとは言いがたい。

 テレビも音に徹底的にこだわるようになり、CDやFMに対して真っ向勝負を挑むのなら、口パク禁止も意味があるだろう。半面、あえて口パクを貫き、アーティストが自信を持って制作したCDを堂々と流す音楽番組があって良いのではないだろうか。いずれにせよ、地デジ化によってテレビ界は高音質という武器を得たのだから、これを生かさない手はない。

 なにしろ、今は音楽番組にとって冬の時代。1980年代までは、『ザ・ベストテン』(TBS)のような高視聴率番組が目白押しだったが、近年は2桁台の視聴率を得るのも難しくなっている。

 その理由として売れっ子アーティストの不在を挙げる声もあるが、だからといってテレビマンたちが音楽番組をあきらめてしまうわけにはいかないだろう。

 まだテレビの音は発展途上。のびしろが十分にある。たとえば、アーティストのコンサートは後にDVDとして発売され、ビジネスが成立しているが、音楽番組をそのままDVD化するのは難しい。

 著作権上の問題が前提にあるが、そもそも音がコンサートのDVDやスタジオ収録のCDより劣る。これは、音響担当者やアーティストの責任というより、設備など物理的問題だ。将来的に音楽番組のDVD化をビジネスに出来れば、テレビ局やアーティストの利益となり、ユーザーにとってもマイナスではないだろう。

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