TPPの本協議はまだ始まっていない! 反対派の不安を煽るよりもまず、オバマ政権に「ファストトラック」獲得要求を!
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 安倍晋三首相が環太平洋経済連携協定(TPP)交渉への参加を公式に表明してから半月あまりが経過した。メディアには、相変わらず、米政府の強硬姿勢を演出して懸念を煽るような報道や、反対派の不満を代弁するような記事が後を絶たない。

 背景にあるのは、日米2国間の事前協議の内容について、両政府が開示しない方針を採っていることだろう。これが災いして、何か不都合なことが起きているに違いないと取材・報道する側が必要以上に疑心暗鬼になっているように映る。

 しかし、筆者がより突っ込んで取材をしたところ、そうした記事は、事実を正確に伝えるとは言い難いという印象を持った。むしろ、ようやく日本が交渉参加を正式表明したことを、とりあえず歓迎するムードが事前協議の米側窓口には強いようだ。自動車や保険といった個別の問題を含めて、強硬かつ理不尽な要求を持ち出した形跡は確認できなかった。

 そこで、あえて、この段階で、政府に対米要求として掲げて貰いたい問題がある。それは、本来、米議会の権限である通商に関する外交交渉の権限を大統領府に委ねる「ファストトラック」(一括承認手続き)の獲得だ。

 今後、両政府がギリギリの交渉の末に辿り着くであろう妥協案が議会による卓袱台返しに遭うリスクをなくすため、是非、早期に「ファストトラック」を獲得するようオバマ政権に働きかける必要性があるのではないだろうか。

自由貿易は日本の生命線

 「今がラストチャンス。この機会を逃すと、日本が世界のルール作りから取り残される」

 安倍首相は3月15日に官邸で開いた記者会見でこう語り、満を持して準備してきたTPPの交渉参加を正式に表明した。

 太平洋を取り囲む11ヵ国は、今年10月のアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議での大筋合意を目指している。残された協議は、5、7、9月の3回だけ。

 日本がなんとか7月から協議に参加するためには、すでに日本の参加を事実上、了承、歓迎する姿勢を示しているチリ、シンガポール、ペルー、ブルネイ、マレーシア、ベトナムの6ヵ国に加えて、農産物や木材の関税引き下げなどで日本と利害が対立し易い米国、オーストラリア、ニュージランド、日本に先駆けて交渉参加を表明したカナダ、メキシコと事前協議を行って交渉参加の承認を取り付ける必要がある。そうした根回しに残された時間は、まさに残りわずかだ。

 自由貿易は、日本の生命線だ。列強の関税引き上げ競争とブロック経済圏の構築が引き金になった第2次世界大戦の轍を踏んではならない。

 自由貿易体制は、それぞれの国が相手国に比べて優位にあるモノやサービスを輸出し合い、相互に雇用機会を増やすことによって、それぞれの繁栄を保障し合うものだ。

 戦後の日本は、原材料を輸入して完成品を輸出する加工貿易や通商を足掛かりに、戦後復興と高度成長の道を切り開いてきた。

 リーマンショックを克服し切れず、尖閣諸島などの領土問題が存在する現状は、大恐慌と満州事変・日中戦争を抱えていた戦前と背景が酷似している。それだけに、以前にもまして、自由貿易体制の維持と拡大が重要になっている。日本として積極的にTPPにコミットしていく重要性が増していることも言うまでもない。

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