尖閣問題だけが日中関係ではない! 長期的な視点から二国間の課題を冷静に処理する戦略的互恵関係の維持・発展が必要である!
〔PHOTO〕gettyimages

 3月31日から、中国の北京に来ている。要人と会見したり、大学で講演したりして、今の中国の状況を直に見聞きしている。

 日中関係は、尖閣諸島をめぐる軋轢もあって、このところ良好ではない。しかし、アジアの大国であり、GDPで世界第二位と第三位を占める中国と日本が対立を深めることは、両国にとってのみならず、世界の平和と繁栄にとってマイナスである。どうすれば今の状況から脱却できるか、ひどい大気汚染の空の下で、何らかの智恵が出せないかと努力している。

 中国では、先の全人代で習近平体制が確立した。習近平氏は、早速、ロシア、アフリカを訪問し、習近平外交を展開した。これには、日米両国を牽制したり、アフリカでの資源を確保したりしながら、大国・強国への歩みをさらに進めようという狙いがある。

 一方、安倍首相は、政権就任から3ヵ月、円安・株高という結果を出したアベノミクスが好調で、内閣支持率も上昇を続けている。その安倍首相も、これまで、東南アジア(ベトナム、タイ、インドネシア)、アメリカを訪ね、外交の実績を積み重ねてきたが、30、31日の週末にはモンゴルを訪問した。まさに、「中国包囲網」とも言えるネットワークの形成である。

 このように日中両国で新政権が本格的に動き始めたことは、悪化した二国間関係を改善する機会となりえよう。今日の午後は、清華大学で「日中関係: その課題と展望」という演題で講演する予定であるが、次の世代を担う若い学生諸君に、以下のようなことを率直に語りかけてみようと思う。

原子力の安全性向上と環境問題対策

 まずは、戦略的互恵関係の維持・発展の必要性である。安倍首相と、2月27日に参議院予算委員会で議論したが、安倍総理は日中関係の改善に努力する決意を語った。日中間で「戦略的互恵関係」という言葉を使い始めたのは、第一次安倍内閣のときである。

 私は、安倍首相に「2006年10月に打ち立てられた戦略的互恵関係というのが、時の総理が、しかも相手のカウンターパートがお互いに呪文のように唱えてそれで終わってしまう、そういう状況になっているということをどういうふうにお感じになっているか」と問うた。

 それに対して、安倍首相は、こう答えた。

 「国境を接していますから、いろいろなぶつかり合いもありますし、認識の違いも生じるけれども、そういうことが起こったとしても、戦略的互恵関係というのは常にお互い全面的に関係を悪化させない、つまりお互いがそれを悪化させては困るであろう経済の関係において影響させない、これこそが戦略的互恵関係なんだろうと思います。

 ・・・私はいつも申し上げているんですが、日本としては、日本政府としては、ドアは開いている、対話のドアは常に私の側では開いているということを申し上げているところであります」

 私は、具体的な中国支援策として、第一に原子力発電所の安全性向上、第二にPM2.5などの環境問題対策を提案したいし、さらには、北朝鮮が軍事的に暴発しないように、日中間で協力することも重要だと考えている。

 北朝鮮は、米韓共同演習に対して異様なほどの反発をみせており、朝鮮半島をめぐって緊張が高まっている。日本としては、アメリカと協力して、北朝鮮に対して「対話と圧力」の方針を継続していくが、北朝鮮と関係の深い中国による影響力の行使にも期待したいものである。

 北京では、工場や家庭からの煤煙、自動車の排気ガスなどに加えて、黄砂も襲来し、PM2.5の値が驚くほどあがっており、不健康そのものである。中国の友人たちは、せめて黄砂のおさまる5月末まで訪中を延期したらどうかと、私の出発前に勧告してきたほどである。

 私の故郷、北九州市は、かつての製鉄都市から今や先端環境都市へと変貌を遂げている。北九州市は友好都市である大連市の環境対策を支援し、すでに多くの成果をあげているが、そのような取り組みを国と国との間で進めることが、中国の人々の健康維持にも、また二国間関係の改善にも役立つであろう。

この続きは、プレミアム会員になるとご覧いただけます。
現代ビジネスプレミアム会員になれば、
過去の記事がすべて読み放題!
無料1ヶ月お試しキャンペーン実施中
すでに会員の方はこちら