開幕一軍!歴史がいま始まる
スカウト、二軍監督、コーチ、キャッチャーが語る
大谷翔平が乗り越えた「天才の条件」

 近年のプロ野球にあって、彼の「二刀流」への挑戦ほど夢のある話題は久しぶりだ。確かに初めは嘘のような話だった。だが29日の開幕を控え、男の挑戦は歴史を作ろうとしている。彼は何を超えたのか。

二刀流デビューの日

 平日にかかわらず東京ドームに詰めかけた約1万5000人の観衆は、それが決して夢物語ではないことを知った。

 21日の対楽天のオープン戦。8回表、割れんばかりの歓声の中、大谷翔平は実戦初の「二刀流」を披露すべく、マウンドに上る。初球143km、2球目に151kmを計測し、球場は最高潮を迎える。

 この日、「投手・大谷」の最速は157km。1回無失点、被安打1、奪三振2。投じた14球のうち、150km未満のストレートは、初球だけだった。

「断言できますが、球の力は、1年目のダルビッシュ有や吉川光夫より上です」

 '07年まで日本ハムの二軍監督を務めた白井一幸氏は言う。

「直球はもちろんですが、特筆すべきはスライダーでしょうね。軌道が他の投手と全く違う。曲がりも大きく、キレがあるから、嶋(基宏)は完全に崩された」

 昨年打率2割9分の好打者が、呆然と天を仰ぐ姿が印象的だった。156kmの直球をファールで交わした後の4球目、128kmのスライダーをのけぞるように見逃し、三振に切って取られた。

「ほんとうに困る。迷いますわ」

 野球解説者の金村義明氏はそう切り出した。現役時代、投打ともに高評価を得てプロ入りした金村氏も、入団直後は投手として練習に励んでいたが、1年目早々に打者一本に専念する。

「たいていね、どちらかに決めなあかん時がくるんです。大谷は、ピッチャー出身の評論家なら、10人が10人『投手だけをやれ』と言うでしょう。バッター出身の評論家は逆言います(笑)。夢の膨らむ子。球界の宝でしょ。僕が願うのはケガだけはせんでほしいと、それだけです」

 しかし栗山英樹監督はこう明言している。

「翔平に必要なのは慣れだから。課題は一軍にある」

 大谷に二刀流を続けさせたまま、開幕一軍に入れることを決めているようだ。大谷は、プロ野球史上、前例のない第一歩を刻もうとしている。彼は、何が他の選手と違うのか。

 最初のヒントは、この日1度だけ打席に立った「打者・大谷」の、内野ゴロにあった。