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「息子と僕のアスペルガー物語」 ライフ
奥村隆「息子と僕のアスペルガー物語」【第23回】
車を運転すると、すぐ同乗者を怒鳴りつけてしまう理由

【第22回】はこちらをご覧ください。

「お父さんとドライブしたい」と息子にせがまれて

 先週末のこと、僕は、両親が住む実家のある街で、ノロノロと車を走らせていた。後部座席には妻と息子が座っている。僕にとって、本当に久しぶりのドライブだった。

 「おい隆、大変だ。車検が切れちゃうんだよ!」

 父から突然、焦った声で電話がかかってきたのは、その3日前だった。僕は一瞬、「ん? おかしいな」と思った。両親は2週間の予定で、初めて夫婦揃っての海外旅行に出かけていたはずだからだ。

 「あれ、今、イタリアだかフランスだかにいるんじゃなかったっけ?」

 訝しんで尋ねる僕に、父は情けなさそうな声で答えた。

 「確かに今、パリにいるんだけど、ここに来て急に思い出しちゃったんだよ。『あ、そういえば車検の期限はこの3月までだった』って。そう思うと、観光も楽しめなくなってなぁ・・・。隆、忙しいのに悪いけど、代わりに車検に出してといてもらえないだろうか」

 父はよりによって、母と久しぶりにゆっくり観光を楽しもうとやってきた旅先で、自分の車(15年物のポンコツだ)の車検の更新時期が迫っていたことを、急に思い出したというのだ。両親の帰国は4月だから、その時点では車検切れになってしまう。焦っている父の姿を想像すると、何だか気の毒になり、僕は「いいよ、やっておくよ。費用も僕が立て替えておく」と応じた。

 実家の鍵は、近所に住んでいる叔母に預けられていた。それを受け取って実家に入り、父から聞いていた机の引き出しから、車のキーと自動車税納税証明書などの必要書類を取り出すと、車庫に駐めてあった車に乗り込もうとした。

 自動車整備工場に行って帰ってくる間、妻と息子には、実家で留守番をしてもらおうと思っていた。ところが、僕が玄関を出ようとしたそのとき、息子が叫ぶように言った。

 「お父さん、1人で行っちゃうの? 僕も車に乗りたい! だってお父さん、めったに僕をドライブとかに連れて行ってくれないじゃん」

 息子がそこで駄々をこね始めるとは、まったく想像もしていなかった。しかし、「お父さんと一緒にドライブしたい」と言われると、やはり父親としては息子が可愛らしく、嬉しいものだ。「よし、一緒に行こう」と答えて車に乗せたのだが・・・それが問題だった。