ドイツ
ムンク生誕150周年に沸くノルウェーの首都オスロは、ダイバーシティの最先端を行く町だった
オスロ市庁舎からの港の眺め (以下すべて筆者撮影)

 オスロのお天気は悪かった。前日のフィヨルドの冷たく抜けるような快晴とは打って変わって、どんよりとした空からは小雪が舞い降りていた。町は冬景色。午後もまだ早いというのに薄暗く、底冷えがする。

 オスロは都会だ。町の中心の景観は、ドイツの他の都会とそれほどの違いはない。道には車が走り、たくさん信号があって、人々が忙しそうに通り過ぎていく。ただ、雪がかなり降っていても、道行く人が誰も傘をささないのが不思議だった。5分も歩くと、首に巻いたマフラーやコートの襞に雪が積もっていく。

 気温はかなり低かったが、ベビーカーをよく見かけた。雪やら風から守るため、しっかりシェイドがしてあるが、覗き込むようにすると、小さなミイラのように顔だけ出した赤ん坊が見えた。生まれて間もないころから、こうして冷気を呼吸しているのだから、寒さに強い人間ができるはずである。

ベビーカーを押す若い男たち

 そういえば、こちらの人の体感気温は私たちとはだいぶ違うようだ。フランクフルトの空港でノルウェー行の搭乗を待っていた時、ドイツ人はまだ冬支度だったというのに、ノルウェー人だけが驚くほどの薄着をしていた。

 5歳ぐらいの女の子が薄い木綿のノースリブのワンピースで走り回っている。親はTシャツで、どう見ても真夏の服装だ。彼らはそのままの格好でゲートから冷え切ったバスに乗り込み、厚いコートを着込んだ私たちを物ともせず、のんびりとタラップまで歩いていった。

 しかし、ノルウェーに来てみて、それが例外でないことはすぐにわかった。外に出るときにはマフラーと帽子を付け、コートを着る彼らだが、事務所や家の中では、真夏の恰好で歩いており、ホテルの朝食ルームでは、半ズボンをはいている人までいた。皆、赤ん坊のときからベビーカーの中で鍛えられているらしい。

ベビーカーを押す若い男性たち

 ベビーカーと言えば、目立ったのが、若い男の人がたくさんベビーカーを押して歩いていたことだ。北欧は男女共同参画が世界で一番進んでいる場所だ。子どもを産むのは女でも、育てるのは女とは限らない。ダイバーシティの最先端を行く国である。

 ダイバーシティとは「多様性」のことで、直訳すれば、「幅広く性質の異なるものが存在すること」。つまり、さまざまな違いを尊重して受け入れ、「違い」を積極的に活かすことにより、変化しつづけるビジネス環境や多様化する顧客ニーズに最も効果的に対応できるとし、企業マネジメントの方法として、ここ数年、とみに注目されてきた考え方だ。

 ダイバーシティの第一歩は、年齢、性別、国籍などに対する偏見をなくすことで、たとえば日本人の大卒の男子だけを採用しようとする企業があるなら、ダイバーシティ度は最低ということになる。反対に、ダイバーシティが進むと、誰もが有利、あるいは不利にならず、皆が生産性を発揮できる労働環境、そして、生活環境を築き上げることができる。ノルウェーでは、就業者の性別は男女がほぼ半々で、賃金の差もない。

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