冷戦期の「封じ込め戦略」は通用しない! 「安保防衛」「貿易投資」「第三国との関係」の立体軸で考えるこれからの日中関係

 日本が環太平洋連携協定(TPP)への参加を表明したのをきっかけに、世界規模で自由貿易促進を目指したグループづくりが加速している。日本にとって焦点の1つは経済、軍事の両面で存在感を増している中国にどう向き合うか、という問題である。

 まず一連の動きを整理しよう。安倍晋三首相は3月15日にTPP交渉への参加を表明した。日中韓のFTA交渉は26日に始まった。日本は欧州連合(EU)とのFTA交渉も4月に始める。さらに東南アジア諸国連合(ASEAN)に日中韓、オーストラリア、インド、ニュージーランドを加えた16ヵ国による東アジア地域包括的経済連携協定(RCEP)も5月に交渉入りする。

 まさに世界の主要国が競い合って自由貿易圏作りに乗り出した格好だ。こういう展開になった要因としては、なんといっても日本がTPPに参加表明したことが大きい。

日本にとっては最高のポジション

 私はTPP反対論が幅を効かせていたころから、日本がTPP交渉に加われば、中国も動き出すから、日本は二股作戦を展開できる絶好のポジションに就けると指摘してきた(たとえば「『TPP参加』賛成派からの警告」、『Voice』2012年1月号)。

 中国ばかりかEUまでが乗り出してきた現状は、日本にとって二股作戦どころか、欧州を含めた三股作戦ができる最高のポジションといえる。

 こういう陣取りは、たとえばカナダやメキシコにはできない。彼らは地理上の理由もあって、すでに米国と北米自由貿易協定(NAFTA)を結んでいる。その中軸である米国がTPPに加わっている以上、新たなグループに参入するとすれば、TPP以外に選択肢はなかった。

 ところが日本はTPPにも参加できるし、日中韓FTAも可能だし、さらにRCEPにも日欧FTAにも足場を築けるのである。日本経済は20年間も停滞していたとはいえ、いまもなお世界第3位の経済規模を誇っている。そういう国であるからこそ、EUは日本に声をかけてきたのだ。

 EUは米国とのFTA交渉も始める。EUからみると、日本と米国で二股作戦を展開している形だ。交渉相手を1つに絞らず複数の相手と同時並行で交渉することによって、自分たちの交渉力を高めようという戦略である。

 各国がそれぞれの国益を最大化しようと思えば、こういう二股、三股作戦は当然の展開だ。日ごろ自国の都合を声高に主張する中国でさえも、当初はASEAN+3(日中韓)やASEAN+6(日中韓豪印NZ)に消極的だったのに、日本がTPP参加に傾いた途端に前向きに転じたのは、世界規模で加速するグループづくりに乗り遅れまいとしているからにほかならない。

 こうなってみると、日本国内で根強いTPPだけをやり玉にして「アメリカにやられてしまう」などといった議論がいかに的外れか、あきらかである。米国にはやられてしまうが、中国や欧州にはやられないのか。あるいは米国が入ったTPPはダメだが、RCEPや日中韓、日欧FTAならいいのか。

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