金融庁は金融円滑化法への未練を断ち切れ!
官主導の"飛ばし"や"隠ぺい"はアベノミクス第3の矢に反する行為だ!

 日本銀行の黒田東彦新総裁が3月21日に誕生し、新体制が本格的に始動した。アベノミクスが掲げる3本の矢の1つ、「大胆な金融政策」の舞台が整った。日本経済の再生へ、一段と弾みが付くことになるだろう。日経平均株価も既にリーマンショック前の水準にまで回復。今度こそ、「失われた20年」からの脱却をという熱い息吹と高揚感が、政府からも市場からも日々伝わってくる。

 市場に高く評価されているアベノミクスだが、3本の矢のうちの第3の矢である「民間需要を喚起する成長戦略」で世の期待を裏切る訳にはいかない。「アベノミクスも、結局は古い、従来型の自民党的経済政策に過ぎなかった」と失望されることは許されないのだ。

 そのためには、安倍総理自身が年初の所信表明演説で語った通り、「これまでの延長線上にある対応では」、今の日本は苦境から脱却できないとの認識を改めて持つことだろう。そんな中で、1つの試金石とも言えるのが、「中小企業等金融円滑化法」いわゆる「円滑化法」の期限切れ問題への対応だ。

円滑化法と"ゾンビ企業"

 かつての民主党政権下では、将来性があるかないかにかかわらず、苦境に立っている企業はすべて救うという政策を取ってきた。その結果、本来なら市場原理によって退場を迫られるのに、政治の不公正な力によりいたずらに延命した、いわゆる「ゾンビ企業」が大量に生み出されてしまった。

 民主党政権初期の亀井静香金融担当大臣が、金融・経済の専門家はもとより、自らの足元の金融庁、そして広く世論の反対をも押し切って強引に導入したのが、そうした民主党イズムの典型例ともいうべき「円滑化法」だ。

 金融機関はこの法律によって、本来の返済条件を見直すことを事実上義務付けられた。返済されるべき債務を、政治力による特例措置で先送りにしたのである。この"モラトリアム法"によって、構造的な低収益性、低生産性の結果、業績が低迷し、本来なら金融機関から引導を渡されるはずだった企業が延命した。

 その効果は甚大で、施行後半年間は、中小企業の倒産件数はほとんどゼロ。リーマンショック後、100年に1度と言われる大不況に直面したにもかかわらず、全体の倒産件数はむしろ減少したのだった。本来はリーマンショック対応のための2年間の時限措置だったはずが、民主党政権は2度にわたりこの法律を延長した。それが、この3月末でようやく廃止されることとなったのだ。

 この円滑化法を廃止すると、あまりにも多くの企業が市場からの退場を余儀なくされるのではないか、と危惧されてきた。しかし、逆に言えば、それだけの企業を無理やり延命させてきた証しでもある。過った政策が、いかに問題を深刻化させ解決を難しくするか、という典型だろう。

 もちろん、過った政策は早期に正常化しなければならないのは言うまでもない。問題を先送りしたままでは、アベノミクスで目指す成長の足を引っ張ることになるのは明らかだからだ。

 ところが、当初、亀井法案に強く反対したはずの金融庁は、民主党と亀井氏が政権から離れたにもかかわらず、この円滑化法と同じ効果を持つ先送り策を自ら導入しようとしているようにみえる。どんな企業も倒産させず、金融機関に丸抱えさせるというのは、民主党や亀井氏のアイデアではなく、金融庁自身の発想となったのか。それとも、正常化して企業破綻が増えたり、地方金融機関の業績が悪化すれば、過去3年間の自分たちの失策を問われかねない、とでも思っているのだろうか。

 金融庁の先送り姿勢を鮮明に示しているのが、昨年1月にひっそりと改訂された「金融検査マニュアル別冊〔中小企業融資編〕」だ。これは、税と社会保障の一体改革の議論でも迷走を続け、世の中が民主党政権に嫌気していた最中に、人知れず改訂されたものだ。

 金融庁はこの改訂によって、地方の中小企業の生殺与奪、ひいては"ゾンビ企業"温存の決定権を、金融機関に握らせた。もちろん、その金融機関に強い影響力を持つのは、言うまでもなく金融庁である。つまり、このマニュアルによって、円滑化法という悪法を、事実上延長しようと目論んでいたのではないか、と疑いたくなるほどだ。

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