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国民的大論争 第2弾 科学で何でも分かる時代、人間は幸福になったのか 出生前の遺伝子検査 胎児の奇形が分かったら中絶するべきか、生むべきか

 医師、研究者、宗教学者、ダウン症児の親が建て前抜きで本気で考えた

 妊婦の採血だけで胎児の染色体異常が分かる新型の出生前診断が、4月から国内の一部医院で実施される。当事者個人が「選択」を迫られる日はすぐそこだ。そのとき、あなたならどうするだろうか?

新型検査がいよいよ始まる

 妊婦の血液を調べるだけで、ダウン症をはじめ胎児の染色体異常が分かる新型出生前診断。各医療機関に先がけて、東京の民間企業「セル・アンド・ジェネティック・ラボラトリー」が先月22日からこの検査の受け付けを始め、話題を集めている。

「これまで150件ほどのお問い合わせをいただき、契約していただいた方も現時点で3名いらっしゃいます。採血はグアムやハワイなどにある米国の提携医療機関で行っていますが、もちろん今後は日本での採血ができるように調整中です。

 費用は検査料2762ドルに輸送費と手数料を加えた約35万円で、別途渡航費と宿泊費がかかります。

 米国では導入されている検査なので、言葉の問題がクリアできれば、自分で海外に行って検査を受けることもできます。ですから、私どもの仲介なしにすでに検査を受けた方もいるでしょう」(広報担当者)

 同様の出生前検査は、全国の認定医療施設でも4月から受けられるようになる。この新型検査解禁が目前となった今回、本誌は出生前診断と胎児の先天性異常などが分かった場合の中絶の是非について、医師、識者、そして母親たちから貴重な本音を聞いた。それを紹介する前に、新型検査の特徴を簡単に説明しておこう。4月から検査の導入を予定している医療機関の一つ、昭和大学医学部産婦人科学教室の関沢明彦准教授が解説する。

「この新型検査は、従来の検査に比べてやはり精度が非常に高い。35歳以上の妊婦の陽性的中率は8割以上。陰性的中率は99・99%、1万人に1人間違うかどうかという水準です」

 お腹に針を刺して羊水を採取する羊水検査では、確定診断が得られるものの、300人に1人の確率で流産のおそれがある。そのうえ羊水検査で陽性判定を受ける妊婦は2~3%。つまり新型検査を用いれば、受ける必要のない95%以上の妊婦には、羊水検査を勧めずに済むというのだ。

 新型検査ならば簡単に、しかも高精度でダウン症などの染色体異常がわかる。ただ、一般に出生前診断には、中絶という選択肢が暗黙のうちに用意されている。そのため「手軽な新型検査が普及すると、安易な命の選別につながる」という反対意見が根強く、受診してよいものか迷うという妊婦も数多い。また日本産科婦人科学会は、新型検査の対象を「高齢出産の妊婦」「別の検査で染色体異常の可能性が高いと判定を受けた妊婦」などと厳しく定め、あくまでも導入に慎重な姿勢を見せている。