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現地ルポPM2・5だけじゃない
世界を害す中国今度は豚6600匹から伝染病ウイルス

北京〔PHOTO〕gettyimages

 北京ではあまりの大気汚染に在留日本人が悲鳴を上げ、虎の門病院の呼吸器内科部長が駆けつける騒ぎになった。上海では大量の豚の死骸が流れて大騒ぎ。このやっかいな隣国よ、いい加減にしてくれ!

いったん感染したらアウト

 どんぶらこ、どんぶらこ……。

 上海の「母なる河」黄浦江が、3月9日以降、異臭に包まれ、2500万市民が騒然となった。上海名物の「小籠包」を巨大にしたような形をして、大量に川面に浮いている異物は一体何か?

 それは、死んだ豚だった。上海市は、計233隻保有している黄浦江の駆除船を総動員し、懸命に、この死んだ豚を駆除したのだった。

 数え上げてみたら、その数6601頭!(14日現在) かくも多くの溺死した豚は、どこから流れ着いたのか?

 その謎は、豚の耳から解けた。14頭の豚の耳に「嘉興」の2文字が烙印されているのを発見したからだ。

「嘉興」とは、浙江省嘉興市のことである。上海から南西に100kmほど下った人口450万人の都市で、上海と杭州のちょうど中間に位置するため、両都市との交流が盛んだ。昔から「魚米之郷」(海鮮と農作物の豊富な町)と称えられ、上海と杭州の"食料庫"となってきた。

 最近特に有名なのが、養豚である。毎年450万頭もの豚を、巨大市場の上海や杭州に出荷しているのだ。

 嘉興市の地元紙は最近、同市新豊鎮竹林村で、1月に1万78頭、2月に8325頭もの豚が死亡したとして警鐘を鳴らしていた。その死亡原因は伏せられているが、豚インフルエンザである可能性も取り沙汰されている。

 地元紙によれば、嘉興の養豚業者は、一頭育てるコストが150元(1元=約15・5円)かかり、600元で出荷されている。昨年までは豚が疫病で死亡しても、「裏の業者」が買い取って出荷してくれたという。

 ところが昨年後半に、この「裏の業者」の主犯格12人が一網打尽にされた。以後、疫病で死亡した豚を焼却すると費用がかかるので、河に捨てていったというわけだ。

 3月12日に会見を開いた嘉興市牧畜獣医局の蒋皓副局長は、次のように開き直った。

「14頭にわが市の烙印が押されていたからといって、わが市の豚とは限らないだろう。特にわが市では、豚の疫病など一件も見つかっていない」

 だが、農研機構動物衛生研究所の西藤岳彦上席研究員は懸念を示す。

「豚サーコウイルスの可能性が疑われているようですが、サーコウイルスではあれほどの死骸が出るとは考えにくい。豚インフルエンザなら致死率は高くないですが、感染力は高いです。いずれにしてもウイルスがいまのところ日本に直接入ってくる可能性はほぼありませんが、いったん入って来たら広がる危険性があります」

 いずれにしても、2500万上海市民は「2011年の再来だ」と怒りを露にしている。

 '11年夏、河南省の大手食品メーカーが、豚に特殊な化学薬品を注射し、脂身のない痩せぎすの豚を大量に飼育し、上海に出荷していた。脂身の部分は二束三文でしか売れないからだ。この危険な「痩せ豚」を上海市当局が一斉調査したところ、4678品目もの食品として市民の食卓に上っていたことが判明。市民はパニックに陥ったのだった。

 以後、上海市近郊の各地に、小さな養豚場が出現するようになった。上海の富裕層が別荘などに農民を雇って、「自分専用の豚」を飼育するようになったのだ。

 だが、河に捨てた養豚業者ばかりを責めるわけにはいかない。上海とはわずか車で1時間の距離にもかかわらず、裕福な上海市民とは雲泥の差の生活なのだ。

 2年前の「痩せ豚事件」の際には、まるで奴隷のような生活を強いられている河南省の養豚業者たちの生活ぶりがテレビで報道され、国民の同情を呼んだ。地方の指導者たちは、少しでも任地のGDPを上げて、中央政府での出世につなげようと必死である。全国的な社会問題となって初めて、河南省の養豚業者に省や市が補助金を出すようになり、「痩せ豚事件」は収束したのだった。

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