古市憲寿×安藤美冬 【第2回】
「雇われて働くのが当然」の日本で、起業とは「独立国家」を創ることだ

【第1回】はこちらをご覧ください。

なぜ韓国人は日本人より元気なのか

安藤: 起業を含めた働き方という点で、たとえば韓国ではどうなっているんですか? 韓国は、日本以上に激しい受験戦争があったり、今も財閥が強い力を持っていたりしますよね。

 あと、日本と割と会社の成り立ちが似ていたり、社会構造の共通項も多い。ただし、サムソンやヒュンダイの業績が良く、LINEも生み出すなど、日本と違って国全体に元気があるように見えます。

 私はオランダに留学していた時代、隣の部屋に住んでいた韓国人と仲良くなったりして、ソウルに住んでいる友達が何人かいるんですよ。それでときどき韓国に行くんです。企業だけではなく、向こうの若い人たちも元気ですよね。

古市: 韓国は、日本からだと元気に見えますよね。ただ、サムスンやヒュンダイなど一部の輸出企業だけが収益を出しながら、それが多くの国民には還元されていないということが、最近では大きな社会問題になっています。

安藤: 先ほどの「機会」や「結果」の平等という話でいうと、韓国では、一人一人がきちんと目標にコミットして、良い結果を出そうとしているように思います。私の周りにも、勉強して外交官になった人とか、英語力を磨いて新聞社に入り、ニューヨーク特派員として活躍している女性とか、アメリカなどでの海外経験を生かして輸入業のビジネスで成功した人など、良い地位を得ている韓国人が何人もいます。そして、そういう人たちが割ときちんと評価される。

 良い大学に入って、企業に入って、独立して、成功して・・・というふうに結果を出している人たちの多くが、正当に扱われているわけです。でも日本では、そういうことがあまりないように思うんです。

古市: ないですね。日本では特に女性が大変で、それは、多くの女性が社会に出て働くようになってから、まだあまり年数が経ってないからだと思います。一般の大企業では、せいぜい40代か50代の女性管理職がちょうど出始めたぐらいでしょう。ロールモデルがいないんですね。

 だから、テレビに出ている女性の識者なんかを見ても、本当に一部のすごい人ばかりじゃないですか。自分で会社を起こして成功した人とか、公認会計士とか、学者とかばかりで、普通に頑張って仕事をしている女性のキャリアというものが、まだあまり確立されていない。それで女性が働きにくくなっているという部分があると思います。

 特に、子供を産んでからのキャリアが大変。海老原嗣生さんの『女子のキャリア』という本に、そのあたりの構造が詳しく書いてありました。

 韓国も、その状況はよく似ているんです。子供を産むときに、会社を辞めてからしばらくキャリアにブランクが空く国って、日本と韓国ぐらいなんですね。ヨーロッパでは、育児休暇を1年くらい取ってから元のキャリアに戻る、なんてことは普通なんですけど。

 日本と韓国で、女性が結構大変だという構造的な困難さは似ていると思います。ただ、安藤さんがおっしゃっているのは、きっとメンタリティの話ですよね。メンタリティで言えば、韓国の人の方が元気な気はします。

 ちょうどこの前のピースボートのクルーズも、日本と韓国の共同共催で、乗船客も半分が韓国人、半分が日本人くらいだったんですけど、韓国人の方がはるかにエネルギッシュでした。講演でも韓国人の方がよく質問してくるし、トークの最中にもどんどん口を挟んできて。

安藤: たとえば講演の最中に、「それはどういうことですか?」って手を挙げて質問してくるとか?

古市: はい。普通にどんどん手を挙げて入ってきますし、あとは、質問の時間なのに自分の意見を滔々とまくし立てる人もいる(笑)。とにかく、前へ前へという感じなんです。

 食事にしても、直前になって韓国側でツアーを主催するNPOが「キムチは絶対に入れてくれ」と言い出して、ごり押しでメニューに入れさせた、なんてこともありました。そういう交渉力もすごいです。

安藤: そういうところは韓国人の強さなんですかね。日本人のように人の目を気にすることがなくて。

 私は、自分では日本的なイメージの起業家だとは思っていませんが、人に見られる立場にはなっています。自分の裁量で働く自由はあるものの、人目に触れるということは、場合によっては不自由さも感じます。

 そういえば、しばらく前にNHKの『ニッポンのジレンマ』という番組に出させて頂いたんですけど・・・。

古市: 収録時間がすごく長かったそうですね。

安藤: はい、そのときの雰囲気はとても良かったのですが、一つだけ気になることがありました。10人の論客の中で、女性が私を含めて2人だけだったことです。もう1人は、エシカルジュエリーを製作している株式会社HASUNA代表の白木夏子さんでした。

 私は個人で働くフリーランスで、白木さんは会社を組織して働く社会起業家です。しかも最近お子さんが生まれて、育児をしながら働いていらっしゃる。お互いに大企業や上場企業を経て現在のポジションにいるのですが、30代の女性を代表するのがこの2人というのは、あまりにも偏りすぎていると思ったんです。

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