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第2部 勉強はできるのに人間はできてないだから職場で嫌われる

大研究 ああ、東京大学 東大に入っても不幸な人、東大出たのに不幸な人

面白いことが言えない

 東大経済学部を出て、メガバンクに就職した男性(24歳)の順風満帆な人生に異変が生じたのは、初任地が地方支店に決まったときだった。

「北関東の支店への配属でした。国内の大手銀行なら、どこもかしこも東大だらけと思うかもしれませんが、実際には、東大がまったくいない支店もある。僕が配属されたのはそのひとつでした。

 配属初日、朝礼で挨拶をしたのですが、支店長に『彼は東大卒の幹部候補だから、くれぐれも迂闊な言動は控えるように』とニヤニヤしながら紹介されたとき、カルチャーショックを受けました。東大の外に出たら、東大ってだけでこんなにいじられるんだ、って。

 在学中は、サークルは学内のバドミントンサークルだったし、アルバイトも家庭教師と予備校講師しかしていなかった。しかも僕は開成高校出身で、弟も開成東大だったんで、東大生が存在しない環境を知らなかったんです。

 その日から完全におもちゃ。僕への『東大いじり』が始まりました。さすがに行内ではあからさまに言われないんですけど、営業時間外の飲み会なんかでは毎度毎度『東大は俺の酒が飲めねえのか』『東大のくせに話つまんねえな』と言われ続けて、途中から『開成いじり』も入ってきて、『おい、お前日本最高学歴じゃねえか? 学歴最強~って叫べよ』とか言われて、どうしていいかわからず呆然としてしまいました。

 支店の全員が僕の悪口を言っているように思えました。ちょっとしたノイローゼだったんだと思います。それで結局1年経たずに辞めてしまいました。いまは予備校講師をしながら再就職先を探していますが、予備校の居心地が良くて、もうしばらく続けてもいいかな、と思っています」

 せっかく東大を卒業しても、企業社会に飛び込んだ瞬間、それがマイナスに働いてしまうことはしばしばある。

論争・東大崩壊』などの著書がある京都大学名誉教授・竹内洋氏がその原因を解説する。

「東大生は、長年受験勉強という個人プレーを続けて成功を収めてきたために、人に合わせるという発想がない人が多い。協調という、昔ながらの日本の美徳を持ち合わせていないのです。そうした東大生はもはや、日本人というよりは『東大人』という別の人種だと考えたほうがいいかも知れません」

 先の男性の場合、ほめられて当たり前で、自分が批判の対象になることなど完全に想定外という、実社会の厳しさを知らなすぎる「ひ弱さ」が浮かびあがる。竹内氏が続ける。