TPP交渉参加表明で政治的リーダーシップを示した安倍首相が次に問われるのは、「日中冷戦」への対応である!
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 日本の政治は、安倍首相の筋書き通りに動いている。アベノミクスも滑り出しは好調で、円安・株高が続き、期待が先行しているとはいえ、世の中に明るい兆しが見え始めてきた。しかも、景気の好転が、春闘の満額回答に見られるように、サラリーマンの給料にまで波及してくると、さらに、気分が明るくなる。それが、内閣支持率の高さにつながっている。

 日銀総裁・副総裁の人事は、参議院でも同意され、物価目標2%の達成に向けて、黒田新総裁の下、大胆な金融緩和政策が展開される見通しである。懸案のTPPについても、安倍首相は、自民党内の反対派を抑えて、交渉に参加することを決めた。これは、日本経済にとっては、総合的に見てプラスになるであろうし、総理の政治的リーダーシップを内外に喧伝する大きな材料ともなる。

 政府と党との関係については、政高党低である。官邸が決めたゴールに到達するために、党内で対立図式を演出したり、ガス抜きの場を提供したりする。これは、自民党のお家芸であり、結局は、首相が絶対的な権力を行使することを可能にするのである。このパターンは、内閣支持率が高ければ高いほど顕在化する。

マスコミとの蜜月はいつまで続くか

 しかしながら、参議院選挙を控えて、TPPに反対する農業団体などの票が自民党から離反するのではないかという懸念もぬぐいきれない。

 小泉純一郎首相が郵政民営化に踏み切ったとき、特定郵便局などの票が自民党を離れたが、それを大幅に上回る浮動層の票が小泉改革を支持し、選挙に大勝した。安倍首相がそれと同様な現象を起こしうるか否かは、マスコミの対応に影響されるところが大きい。マスメディアにとっても、今のところ、表だって安倍政権批判ができないような空気がある。この蜜月が、はたして夏の参議院選挙まで続くのかどうか。

 小泉元首相は、劇場型政治を展開させた。自民党内に敵を作り、「自民党をぶっ壊す」とまで宣言して、選挙のときには、刺客を放つようなことまでした。これは、マスコミ、とくにテレビにとっては、格好の商売ネタを提供したのであり、小泉劇場は観客動員に成功したのである。

 安倍首相の場合は、これまでのところ、小泉型の劇場政治は踏襲していない。敵をあえて作らなくても、民主党政権の失敗が安倍政権の政策を斬新に見せている。それは、政策レベルにとどまらず、官僚の使い方、情報管理の仕方、マスコミとの対応などで、民主党との違いを浮き立たせるだけで可能なのである。

 自民党部会での議論など、かつての古顔と伝統的な手法とが映像で流されても、「古い自民党」の復活と批判されるのではなく、素人の民主党とは違うプロ集団だと評価されるのだから、ありがたいものである。

 小学生の学芸会芝居に三年間も付き合わせられたら、久しぶりに見るプロの芝居は、たとえ大根役者でもまともに見えるものである。民主党政権を支持してきた評論家やマスコミは、今はどうしているのであろうか。自民党にしても、敵失で政権の座に復帰したのだという認識がなければ、政権の持続的運営は困難になろう。

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