「自由貿易」「安全保障」からもメリット大。あまりに粗雑で誤解だらけのTPP反対論を論破する

 安倍晋三首相は15日午後6時、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)への交渉参加を記者会見で正式に表明した。

 昨年の衆院選挙ポスターでは「ウソつかない。TPP断固反対。ブレない。日本を耕す!! 自民党」とあった。今回の安倍政権の進めぶりは、その選挙公約にも違反せず、北朝鮮の核実験をまって2月下旬に日米首脳会談を行い、それでTPP交渉参加と集団的自衛権を同時にセットする用意周到さが目立った。

 世論にも自民党内にも反対がある。ただし、反対論は粗雑で以下に述べるような相当な誤解がある。筆者の率直な見通しをいえば、TPPの(1)自由貿易のメリットと(2)安全保障上のメリットに比べると、反対の大義名分は続かないだろう。

 まず、(1)自由貿易のメリットである。政府からTPPに参加したときのメリット・デメリットが示され、メリットがデメリットを上回るとして、政府試算によれば3.2兆円のGDP増加と報じられている。

 政府試算に限らず政府の資料を鵜呑みにするのは危険であるが、この種の試算はかなり前から行われてきたので、誰が計算しても大体同じになる。もちろん外国についても計算できるし、外国人が日本を計算してもだいたい似たり寄ったりの計算結果になる。試算モデルも各国から持ち寄ったものになっているので、かなり公開性も高く信頼できる。

「10年間で3兆円GDP増加」の誤解

 ただし、マスコミ報道ではあまり正確に報じられていない。計算はTPP参加前と調整のための一定期間経過したTPP発効後の比較をする比較静学という手法で行われる。基本的には、2010年11月15日付け本コラム「TPPはなぜ日本にメリットがあるのか 誰も損をしない「貿易自由化の経済学」」で示したような図のメリット・デメリットの「面積」を計算している。というわけで、一定期間経過後に、その前より年間GDPがどれくらい増えたという計算になる。

 ところが、TPPに反対する多くの識者は、こうした計算方法を知らない。そのため、政府試算の「10年間でGDP3兆円増加」について、正しくは「10年間経過して調整が終了した後に、年間3兆円のGDP増加があって、それがズーと続く」という意味であるのに、「10年間で3兆円GDP増加」と「年間3000億円しかGDP増加しない」と誤解して、反対論を張っている。 

 もっとも、年間3000億円しかメリットがないといって反対するが、何もしなければ何も得られない。年間3000億円でもプラスであればTPPに参加してもいいくらいだ。

 なお、先の本コラムでわかるように、理論的には、TPPによる輸出増なしでも、輸入に伴う消費者のメリットは輸入で影響を受ける国内生産者のデメリットを上回る。それに、輸出者のメリットが加わるので、自由貿易のメリットはかなり大きい。これは経済学200年の歴史で異論のない結論だ。

 もちろん国内生産者のデメリットがあるからこそ、自由貿易には反対運動がある。消費者からのメリットの一部を、経済被害を受ける国内生産者に所得移転(所得補償)してもまだ余りが出る。だからこそ、自由貿易を進めていける。

 その所得移転は政治の仕事だから、政治家の出番になる。しばしば自由貿易に反対していた政治家が反対派を仕切り、所得移転のボスになることも珍しくない。反対している国内生産者も所得移転がほしいからポーズで反対をしていると思えなくもない。

 政府試算ではTPPによるメリットが6兆円程度、デメリットが3兆円程度で差し引き3兆円のGDP増加となっている。ということは、最大3兆円の所得移転を政治が行う可能性がある。

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