雑誌
話題の本の著者に百田尚樹
「出版界に片っ端から喧嘩を売る本になりました」

─本を出したい人に、出版費用の一部を負担してもらう自費出版話を持ちかけ、あの手この手でおカネを引き出していく敏腕編集者・牛河原が活躍する『夢を売る男』は、出版業界への痛烈な批判がこめられたブラックコメディです。構想のきっかけはなんだったのでしょう。

『夢を売る男』
著者:百田尚樹
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 僕はフリーランスの放送作家としてテレビ局で仕事をしてきましたから、とにかく視聴率が命、数字が取れない番組は容赦なく打ち切りという業界に身を置いていました。ところが7年前に作家デビューして知った文芸出版の世界は、売れない本を出しても許されるような業界だったんです。僕が書くエンターテインメント本の場合、現状は大多数が赤字になるにもかかわらず、出版社は本を出し続ける。どこまで本音かわかりませんが、出版社は「これは文化事業だから……」みたいなことを言い、編集者も作家も、赤字の本が出続けることにそれほど危機感を持っていない。テレビ業界から飛び込んだ僕には、なんとも不思議な世界に思えたんです。

 一方で僕が作家になったころから自費出版ビジネスがどんどん盛んになり、現在もその勢いは続いています。自分でおカネを出してまで本を出したいという夢を持つ人がいることや、その夢をビジネスにしている業界に対しては、ずっと興味を持っていました。また、僕自身が「人はなぜものを書くのか」「物語を書くというのはどういうことなのか」といった疑問をずっと抱いてきたこともあり、本を書くという行為自体を小説にしてみたい、それには自費出版ビジネスを舞台にするのがいちばんわかりやすいと思ったんです。