ドイツ
ノルウェー第2の都市ベルゲンで、世界遺産の家並みと名物の鱈料理を堪能した
ブリッゲンの家並み

 ノルウェーのベルゲンに来ている。ノルウェーというのは面積が38万5000㎢で、日本とほぼ同じ。そのうえ、森林や山のために人の住めない場所が80%というのも、山がちな日本とよく似ている。ただ、人口はたったの497万人なので、日本の4分の1にも満たない。だから、首都オスロに次ぐノルウェー第2の都市ベルゲンも、人口26万5000人と小ぢんまりしている。

 ベルゲンは北海に面した港町で、1070年にオーラフ・ヒッレという王様によって町が建設されたと言われている。ただ、周りにはたいした資源はなく、人口もわずかだったため、町は、穀物を始め様々なものを輸入するしかなかった。バルト海沿いの穀倉地帯から穀物が運ばれ、その代わりに物々交換として輸出されたのが魚である。

 幸運なことにベルゲンは、魚の宝庫である北部ノルウェーとヨーロッパの主要な商業都市のちょうど真ん中に位置していた。しかも、穏やかな自然の良港と、よい水路を有していたため、見る見るうちに交易の中心地に発展し、そのおかげで、13世紀末まではノルウェーで一番豊かな町として栄えた。

 当時、港の西岸の一角に、交易に携わった商人たちの商館が立ち並んだ。その地域はブリッゲンと呼ばれ、正面の海沿いと、その後ろにもう1列、建物がぎっしりとひしめいた。ブリッゲンは1702年の大火で一度焼失したが、その後、12世紀当時の図面通りに再現されたので、今もそのままに中世の面影を見ることができる。

 海に向かって、切妻造りの三角屋根がいくつも並び、木で覆われている外壁は、様々な色にペイントしてあって可愛らしい。家と家の間が細い回廊になっている場所もあり、個性的なつくりだ。今では、ベルゲンの一番の見どころとなっている。

ブリッゲンの世界遺産レストラン

ハンザ同盟の海外拠点として繁栄

 ブリッゲンは現在、ユネスコの世界遺産なのだが、中にはレストランやら、パン屋さんやら、その他いろいろな店舗が入って、普通に営業しているのが面白い。一度、ブリッゲンの2階のフィッシュ専門のレストランで食事をしたが、古風な調度がまるで博物館のようで、木の床はウエートレスが通るたびにぎしぎしと揺れた。しかし、世界遺産の中で食事をしていると思えば、揺れようが、きしもうが、構わない。

 前菜に鯨のカルパッチョを勧められ、「ああ、ノルウェーは日本と同じく昔からの捕鯨国だった」と思い出した。動物愛護団体などに捕鯨を非難されているのはノルウェーも同じだが、堂々と鯨をお勧めメニューに載せているところが立派? 注文したら、とろりとした赤身で、大変おいしかった。

 中世に話を戻すと、ベルゲンは大変な繁栄ぶりだったようだ。1191年、この町を訪れた外国人が次のように記している。

 「鱈(タラ)が大量にある。それは、測ることも数えることもできないほどの量だ。船と人間が、あらゆる方向からここへ向かってくる」

 そのベルゲンにドイツのハンザ商人がやって来たのは、13世紀のことだ。13世紀の終わりには、ドイツの商館が開かれ、ベルゲンは、ハンザ同盟が海外に持っていた4つの拠点の1つとなった(他の3つは、ブルージェ、ロンドン、ロシアのノヴゴロド)。これ以後ベルゲンの交易はハンザ商人に独占され、ここでのドイツ人の優位性は、ハンザ同盟が消滅した後も、18世紀半ばまで続いた。

 ベルゲンの繁栄の要因は干し鱈。ノルウェー北部で採れた鱈を塩漬けにし、干したものだ。干し鱈は今でも名物で、魚市場でも、レストランでもお目に掛かれる。ドイツのハンザ商人は、穀物、小麦粉、麦芽、ビール、そしてワインなどを売っては、ベルゲンの干し鱈を全ヨーロッパに売りさばいた。

 貿易は、ハンザ同盟から派遣された参事が仕切った。ドイツ語でミサの行われる教会もあれば、独自の裁判権まで持っていたというから、その影響力は強大だったはずだ。

魚市場で見た干しタラ

 ハンザ商人と北ノルウェー人の交易は物々交換で行われたが、漁獲量には毎年、差がある。鱈の少ない年に北ノルウェー人が飢えてしまっては、将来の交易に悪影響を及ぼすので困る。そこでハンザ商人は、不漁の年でもノルウェー人の顧客に食料を貸し与える制度を考え出した。これにより、ノルウェー商人の生活は保障されたが、ハンザ商人に対する借りは次第に増え、その借金は子の代にも受け継がれたため、彼らは長年の間にがんじがらめになっていった。

 最盛期には、1000人以上のハンザ商人がベルゲンに常駐していたが、居住はブリッゲン以外は許されず、店主から見習いまでが、皆、それぞれの商館の一つ屋根の下で暮らした。ヒエラルキーは厳しく、また、駐在している間は全員、妻帯が許されていなかったという。

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