孫への教育資金贈与が非課税に
15年までの時限措置 子育て世代への資金移転を促進[税制]

 13年度税制改正大綱に、孫への教育資金の一括贈与を非課税とする措置が盛り込まれている。信託銀行などが加盟する「信託協会」が要望していたもので、国内の個人資産約1500兆円のうち保有者の6割を占めるとされる高齢者世代から、若い世代への資金移転を促すとみられている。これによって、子の世代の教育費負担が減りその分、消費を活性化させる効果があると期待されている。

 今回盛り込まれた非課税措置は、祖父母から孫など直系の親族に教育資金を一括贈与した場合、贈与を受ける1人につき1500万円まで贈与税が非課税になるというもの。また大綱では「学校等以外の者」に支払われる金銭については500万円が限度とされた。

 時限措置のため13年4月1日から15年12月31日までの間の贈与に限られる。また贈与を受けられる孫は30歳未満となっている。この制度を利用するには、信託銀行など金融機関に贈与を受ける人の名義で口座を開設する必要がある。

 贈与を受ける人は、教育資金非課税申込書(仮称)を金融機関経由で納税地の税務署長に提出しなければならない。祖父母はその口座に入金して信託することになる。孫はその口座から必要な時に資金を引き出して使う。その際、それを教育資金の支払いに使ったことを証明する領収書などの書類を金融機関に提出しなければならない。

 教育資金とは何かという定義は、この通常国会に提出予定の税制改正関連法案で決まるが、税制改正大綱によると、教育資金の内容を定めるのは文部科学相とし、「学校等に支払われる入学金その他の金銭」「学校等以外の者に支払われる金銭のうち一定のもの」となっている。

 孫が30歳になった時に口座に資金が余っていた場合は、その時点で贈与されたものとして贈与税が課せられるという。信託銀行は、受託資金を金銭信託として運用して利ザヤを得るが、信託銀行は、教育資金一括信託で教育費支出の管理や国税への報告、30歳になった時の処理などの作業量が増えるという。

 具体的にはどんな信託になるのか。すでに信託業界が運営している「特別障害者扶養信託制度」をみるとイメージできる。特別障害者とは重度の障害がある人で、障害者手帳の等級が1、2級の身体障害者や1級の精神障害者、重度の知的障害者をいう。全国に約200万人がいるとされる。相続税法21条の4で6000万円を限度に贈与税を非課税とするとされる。扶養義務者が特別障害者を信託の受益者として、信託銀行に金銭を一括して信託し、親の死後にも受け取ることができるようにした障害者の「親なき後の不安」を解消するものだ。今回の教育資金の一括贈与の非課税もこれに似たものになるとみられている。

 今回の税制改正大綱では、この特別障害者扶養信託制度も拡充され、一般障害者も対象にすることが盛り込まれた。拡充される対象者は、児童相談所や知的障害者更生相談所、精神保健指定医の判定で、中程度の知的障害者と認定された人と障害等級が2級または3級の精神障害者で、3000万円まで非課税とする。信託銀行に財産管理を任せることで、障害者への確実な財産移転、生活費などの確保ができる。また受益者の障害者が死亡した後に、残余資金を障害者支援団体や施設に寄付する道も開かれた。これは「障害者から障害者へ」の道を作るもので、「贈与者である親の思いを実現するもの」と説明されている。

祖父母の55%が教育援助

 信託協会は民主党政権時代の11年度税制改正から、教育資金の一括贈与に対する非課税措置を求めてきた。当初は1000万円程度を想定していたが、13年度税制改正大綱では受託資金枠が拡大された。同協会によると、幼稚園から大学まで私立の場合の教育資金は約2230万円で、すべてが公立の場合は約770万円という。同協会のアンケートでは、「子供の家庭にどのような援助をしたいか」という問いに対して「孫の費用」との答えが全体の38・7%あり、「孫のためにどのような用途に援助したいか」には55・1%が「教育費」と答えている。

 どれだけ需要があるのかについては明確な数字はないが、信託協会は「相当数の利用がある」と見込んでいる。信託銀行は個別の客に合わせて、顧客別の財産管理をしてきているため、銀行や証券会社と比べてノウハウを蓄積している。今回の税制改正大綱の内容が明らかになって、信託協会や銀行各社への問い合わせは増えているという。

 信託業界では近年、「後見制度信託」や公益への寄付を後押しする「特定寄付信託」という新しい制度が作られた。信託協会によると「まず制度が先行して、商品が後追いという形で供給された」という。

 4月に信託協会会長に就く三菱UFJ信託銀行の若林辰雄社長は、新商品を13年度にも投入する方針を明らかにした。新商品は、孫が祖父母から一括譲渡された資金を、入学金や学費などとして計画的に引き出せる仕組みとなるという。マスコミのインタビューに答えた同社長は「孫世代の生活を気に掛ける高齢者は多く、相当のニーズが出る」とみており、贈与税の軽減措置の期間や上限額などをにらみながら「迅速に(商品を)具体化させる」という。

 また、同社長は「孫世代の教育資金などに移転できれば、消費は増える」と、新商品が日本経済の活性化に役立つと強調。政府が掲げるデフレ脱却についても業界として「新商品の供給を通じて貢献したい」とも述べている。

 信託協会の上野宏専務理事は「緊急経済対策に盛り込まれたものなので、できるだけ早い時期に取り組めるように、パンフレットなども含めて準備していきたい」と話している。高齢者世代から孫世代への所得移転という新しい試みがスタートする。

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