北方領土をめぐる「引き分け」発言にプーチンの腹案はない―外交戦略と首脳会談によって日露関係が動く可能性あり
佐藤優直伝「インテリジェンスの教室」Vol.009 「くにまる・ジャパン」発言集より
【佐藤優直伝「インテリジェンスの教室」Vol.009 目次】
―第1部― インテリジェンス・レポート
 ■分析メモ(No.20)「ローマ教皇ベネディクト16世の生前退位」
 ■分析メモ(No.21)「安倍晋三首相とイシャエフ露極東発展相の会見」
―第2部― 読書ノート
 ■出口汪『超訳 鴎外の知恵』
 ■ジェラルド・L・カーチス『岐路にさしかかった日本の外交・安保政策』
 ■樋口麗陽『小説 日米戦争未来期』
―第3部― 質疑応答
―第4部― 文化放送「くにまるジャパン」発言録
―第5部― 佐藤優さんの今後の予定(3月上旬まで)

 本コーナーは、佐藤優さんが毎月第1金曜日と第3金曜日に出演している文化放送「くにまるジャパン」での発言を紹介します。今回は3月1日放送分をお届けします。なお、ラジオでの発言を文字にするにあたり、読みやすいように修正を加えている部分もあります。野村邦丸(のむら・くにまる)氏は番組パーソナリティ、伊藤佳子(いとう・よしこ)氏は金曜日担当のパートナーです。

コメンテーター・ジャパン

邦丸: 今日のニュースはこちら。

伊藤: 毎日新聞総合面。「安倍総理の父を見舞うゴルバチョフ氏の写真 プーチン大統領『私にくれ』」 

 自民党の森喜朗元首相は昨日の「日本・ロシアフォーラム」での講演で、ロシアのプーチン大統領と先月21日に会談した際、安倍晋三総理の父の晋太郎元外務大臣が死去するおよそ1ヵ月前に、当時のソ連のゴルバチョフ大統領と会ったときの写真を手渡したと明かしました。

 晋太郎氏は当時病床にありましたが、森氏が仲介し、91年4月に来日したゴルバチョフ氏と衆院議長公邸の玄関で数分間引き合わせました。安倍総理は当時、倒れそうな父親の背中を支えていたといいます。

 森氏はプーチン氏に対し、「安倍総理はお父さんの時代、祖父の岸信介元総理の時代から含めて、日露の領土問題を何としても解決したいという思いだ」と、安倍総理とロシアの縁を強調しました。プーチン氏はしんみりと聴き入り、「その写真を私にくれ」と受け取ったということです。

邦丸:現在の安倍総理のお父上、安倍晋太郎元外務大臣が亡くなる1ヵ月前に日本の衆議院議長の公邸の玄関で、当時のゴルバチョフ大統領と晋太郎さんが会って、その写真を森さんがプーチンさんに見せたら、しんみりと「その写真をください」とおっしゃったという。

佐藤: プーチンは写真を見せると「くれ」って、いつも言うんです。

伊藤: へえー。

佐藤: 前にもあったんです。1999年、ブルネイでのことです。森さんのお父さんはイ
ルクーツク郊外のシェレホフ市に分骨されているんですね。ですからそのときに、私どものほうでそのお墓の写真を用意したんですよ。あるロシア人に撮ってもらって。それを会談で見せたら、プーチンが「くれ」って。その後、イルクーツクで森さんとプーチンの会談が行われたんです。

 ですから、この安倍晋太郎さんの写真も「くれ」と言ってもらって、それを秘密警察に渡して、その関連の事情を全部調べさせる。そして安倍総理のお父さんに関することで、なにかサプライズをつくれと指示していますよ。

邦丸・伊藤: へえー。

佐藤: あのプーチンという人はムダなことはしないんです。一つひとつ、言うことや行動に全部意味があるんです。そういう意味では、読みやすい人です。

邦丸: 一方で現在の総理の安倍晋三さんは、お父さんの安倍晋太郎さんも、森さんも、お祖父さんの岸さんもひとつの派閥ということでいうと、脈々と流れているんですね。

佐藤: そうですね、清和会ですから。その辺はロシアもよく調べていますよね。とにかく森さんはキーパーソンですから。

 ただ今回、森さんがモスクワに行くときに偉かったなと思うのは、事前に二人のところに挨拶に行っていることです。玄葉光一郎さんと前原誠司さんです。

邦丸: 民主党政権時代の外務大臣。

佐藤: そう。あの二人が外相として、自分が行くようにと公式の会談の席で言ってくれたのだから、二人には仁義を切っておこうと、行っているわけです。今、自民党の政治家で、この弱くなった民主党、6%の支持しかないような民主党なんて誰も相手にしていないじゃないですか。

 しかし、森さんというのは、逆に民主党が強かったときに玄葉さんなり前原さんなりが森さんの力に頼るということで、すごくていねいに訪ねてくるし、情報も持ってきたから、立場が逆になっても彼らのところに行くっていうスタンスなんですね。

 このことはたぶん、このラジオを聴いてみんな初めて知ったと思うんです。私は森さん本人から聞いたから知っているんですけどね。そういうことってアピールすれば新聞記事になるんだけれど、アピールしないんですよね。陰徳を積むというのが森さんの特徴ですよ。

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