「日本のマスコミ報道では見えてこない日米関係を読み解く」ほか

佐藤優直伝「インテリジェンスの教室」Vol.009 読書ノートより

 読書ノートは、書評とは異なります。これから読者が情勢を分析したり、物事を深く考えたりするのに役立つという観点から文章を綴っています。それだから、書評と比較して、引用が長いのです。

読書ノート(No.19)

出口汪 『超訳 鴎外の知恵』 ディスカバー 2013年

 森鴎外は、夏目漱石と並ぶ文豪である。現在も漱石の小説はよく読まれているが、鴎外の著作はあまり読まれない。それは、鴎外の著作の多くが擬古文で書かれているからだ。口汪(ひろし)先生は、擬古文を現代日本語に翻訳し、鴎外の知恵を21世紀に継承することに成功した。

<本書は、ヨーロッパで古くから読まれ続け、しかも、鴎外が日本人に必要なものとして、抽出し、翻訳した三冊の箴言集から、さらに私が現代の日本人に送りたいものを厳選し、超訳したものである。

 残念なことに、三冊の箴言集は擬古文で書かれているため、今の私たちにはかなり読みにくいものとなっている。

 そこで、私が思いきって超訳した。なるべく原典に忠実であろうとはしたが、場合によっては、今の時代にふさわしいように、私なりの解釈を多く取り入れている>(はじめに[頁非表示])

 鴎外と出口汪先生という二人の日本の知識人を通じて、最短距離でヨーロッパの知恵に触れることが出来る。・・・・・・

このテーマについて深く知るための「連読」
NEW出口現代文の実況中継(1)』 出口汪 語学春秋社 2007年
NEW出口現代文の実況中継(2)』 出口汪 語学春秋社 2007年
NEW出口現代文の実況中継(3)』 出口汪 語学春秋社 2007年
鴎外随筆集』 森鴎外(千葉俊二編) 岩波文庫2000年
座右の銘 経営名言集・ピンチはチャンスなり』 大橋武夫 マネジメント社 1978年

読書ノート(No.20)

ジェラルド・L・カーチス
岐路にさしかかった日本の外交・安保政策
 変化した国際環境で問われる日米同盟の価値

 フォーリン・アフェアーズ・リポート 2013年3月号

 日本のメスメディアの報道だけを読んでいると、安倍政権になってから、日米関係が改善したという印象を受ける。しかし、そのような印象が実態から乖離していることが、本稿を読むとよくわかる。

 国際関係は力の均衡によって成り立っている。従って、国家の力関係が変化すると、境界の引き直しが行われる。これが国際政治の本質だ。・・・(略)

 今後、まず米国の一部有識者が、それに続きマスメディアが「日本政府は、『尖閣諸島をめぐって領有権論争は存在しない』というレトリックを弄するのを止めよ」というキャンペーンを展開するであろう。そして、そのキャンペーンは米国政府の対日政策にも影響を与えることになる。・・・・・・

このテーマについて深く知るための「連読」3冊
余震(アフターショック) そして中間層がいなくなる
ロバート・B・ライシュ(雨宮寛/今井章子訳)東洋経済新報社 2011年
日本のアジア外交 二千年の系譜』 小倉和夫 藤原書店 2013年
戦後沖縄と米軍基地 「受容」と「拒絶」のはざまで 1945~1972年』 平良好利 法政大学出版局 2012年

読書ノート(No.21)

樋口麗陽『小説 日米戦争未来期』大明堂書店 1920年

安倍晋三首相がTPP(環太平洋経済連携協定)に参加する方針を明確にした。論壇の一部にはTPPが米国が日本に対する収奪を強めるための陰謀であるという見方が根強くある。こういう言説を唱える有識者は、あたかも日本が米国の従属国であるかのごとき論を展開し、反米ナショナリズムを煽り立てようとする。この傾向は、極めて危険だ。

大正時代から昭和の初めにかけて活躍した樋口麗陽(ひぐち・れいよう 生没年不詳~1932年)という大衆作家がいた。20世紀末に日米戦争が勃発するという未来を予測した小説を大正末期に書いて大人気を博した。・・・・・・・

このテーマについて深く知るための「連読」3冊
オレンジ計画 アメリカの対日侵攻50年計画』 エドワード・ミラー(澤田博訳)新潮社 1994年
日米開戦の真実 大川周明著「米英東亜侵略史」を読み解く』 佐藤優 小学館文庫 2011年
<近代の超克>論』 廣松渉 講談社学術文庫、1989年
【佐藤優直伝「インテリジェンスの教室」Vol.009 目次】
―第1部― インテリジェンス・レポート
■分析メモ(No.20)「ローマ教皇ベネディクト16世の生前退位」
■分析メモ(No.21)「安倍晋三首相とイシャエフ露極東発展相の会見」
―第2部― 読書ノート
■出口汪『超訳 鴎外の知恵』
■ジェラルド・L・カーチス『岐路にさしかかった日本の外交・安保政策』
■樋口麗陽『小説 日米戦争未来期』
―第3部― 質疑応答
―第4部― 文化放送「くにまるジャパン」発言録
―第5部― 佐藤優さんの今後の予定(3月上旬まで)