20年までに「発送電分離」 経産省報告書
小売りも全面自由化へ 具体的な制度設計が課題[電力]

電気事業連合会との会談であいさつする茂木敏充経済産業相(右端)=都内で1月30日

 独占から競争への転換を目指す電力制度改革が前進しそうだ。経済産業省の有識者会議「電力システム改革専門委員会」(委員長・伊藤元重東大教授)がまとめた報告書で、電力小売りの全面自由化や大手電力会社の発電部門と送配電部門を分社化する「発送電分離」の実施時期が明示された。大手電力の反対は根強いが、後戻りすることなく、利用者へのサービス向上につなげる具体的な制度設計が、今後の課題になる。

 改革は3段階で進める。まず2015年をめどに、大手電力の営業エリアを超えて電力需給を調整する機能を持つ「広域系統運用機関」を設立する。電力が余っている地域から不足している地域に送配電するよう電力会社間の調整を図るほか、全国的な送配電網の整備計画を作る。自由化の進展に伴い電力不足などが生じないようにするためだ。

 16年には、これまで大手が独占してきた一般家庭やコンビニなどへの電力小売りを自由化する。一般家庭でも、他地域の大手電力や、既に法人向けに参入している「新電力」などから、自由に電力会社を選べるようになる。

 これによって新規参入が進み、大手間での競争も本格化すれば、利用者への多様なサービスの提供や合理化努力による電気料金の抑制などが期待できる。

 ただし、家庭向け料金に関しては当面、発電に必要なコストを積み上げる「総括原価方式」を維持する。新規参入が進まない段階で料金規制をなくすと、「売り手市場」になり、かえって料金値上げを招きかねないからだ。値下げに向けた競争環境が整ったと判断した時点で、料金規制も撤廃する。

 電力事業への新規参入を促すには、大手が保有する送配電網を別の電力会社が自由に使えるようにする必要がある。現在も、新規事業者は大手の送配電網を借りられるが、「大手が自社の安定供給を理由に、競合相手の利用を制限している」といった不満があった。

 そこで、改革の最終段階として18~20年に、「発送電分離」を実現する。具体的には、送配電部門を分社化する「法的分離」方式により、送配電会社に中立性を持たせる。

 このほか、新規参入する小売事業者が電力を安定的に確保できるように「卸電力市場」を活性化する施策も改革案に盛り込んだ。

 もっとも、こうした改革が順調に進むかどうかは、予断を許さない。小売りの完全自由化を実現するためには、過疎地や離島などへの供給の確保や料金高騰の抑止策など解決すべき課題が少なくない。発送電分離にも、運用の独立性や電力の安定供給をどう確保するかといった問題が残る。

 そうした課題を克服し、利用者にメリットをもたらすには、周到な備えが必要になる。そのカギを握りそうなのが、報告書に盛り込まれた二つの新設機関だ。

改革遂行へ2機関新設案

 その一つが、大手の営業エリアを超えて電力需給を調整する「広域系統運用機関」。安定供給や設備の保全、強化のために欠かせない機関といえるだろう。大手電力に対し、強い権限を持たせるための法整備が求められる。

 もう一つは、改革の実効性を確保するために設ける「規制機関」だ。小売りの自由化や送配電部門の中立化が適正に進んでいるか、卸電力市場が活用されているかなどをチェックし、利用者を保護するセーフティーネットの機能を担うという。

 電力の小売りは00年から、大口の事業所向けから順次自由化されているが、新電力の市場シェアは3・5%にとどまっている。新規参入がほとんど進まなかったのは、市場の公平性を検証する機能が欠けていたからだ。新しい制度を作っても、運用次第では骨抜きになりかねない。

 二つの新設機関にしても、官僚の天下り機関を増やすだけに終わっては意味がない。これからの改革が「絵に描いた餅」に終わらないよう、組織や体制づくりに知恵を絞る必要がある。

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