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筑駒→東大法学部→国家公務員試験2番で合格
日銀・黒田総裁頭がいいというけど、本当はどのくらい頭がいいのか

週刊現代 プロフィール
国際金融マフィア(ほめています)〔PHOTO〕gettyimages

オックスフォードも制覇

「黒田さんは、財務省内などでは、〝クロトン〟と呼ばれています。黒田東彦という名前の『黒』と『東』を合わせて縮めてクロトンです。黒田さんは8年前、『財政金融政策の成功と失敗-激動する日本経済』(日本評論社)という本を出したのですが、実はこの本が今、アマゾンの中古販売で5980円~9500円で売られている(2月28日時点)。もとは1785円なので、3倍以上の値が付いている。政府目標2%のインフレターゲットどころか、300%のインフレを自著で達成していますね(笑)」(財務省中堅官僚)

 日本どころか世界の金融経済界の中で注目されていた日本銀行の新総裁人事。安倍首相は白川方明現総裁の後任に、元財務官でアジア開発銀行総裁の黒田東彦氏を充てる方針を固めた。

 下馬評では、同じ財務省出身でも次官経験者の大物・武藤敏郎氏(大和総研理事長)や、安倍首相の政策ブレーンで金融緩和積極派の岩田規久男・学習院大学教授などの名前も取り沙汰されていたが、首相が指名したのは、ダークホース的な存在の黒田氏だった。

 黒田氏は1944年、福岡県大牟田市生まれ。名門・東京教育大学(現・筑波大学)附属駒場中学、高校を経て東京大学法学部に進学。非常な秀才&読者家であり、東大卒業時の成績は2位、在学中に司法試験に合格し、国家公務員試験の成績も2位だったという。

 一方で、不幸もあった。一部で報じられたように'97年には息子が合成麻薬LSD所持で逮捕されていたという過去があり、これがネックになって、日銀総裁レースから外れるとの見方もあった。黒田夫人は、この事件が蒸し返されることを恐れ、「総裁にはならないで」と、夫に訴え続けていたという。

 財務省OBの一人がこう語る。

「学者肌の人です。普通、役人というのは仕事が忙しいのできちんと経済学を勉強しない場合が多いのですが、黒田さんは珍しくオーソドックスな経済学も勉強していて、英国オックスフォード大学経済学研究科修士課程も修了しています。

 主税局課長補佐時代から、通貨問題などを中心に何冊も本を書いている。旧経済企画庁などの人間なら調査・研究が仕事なので本を書くのも珍しくありませんが、財務官僚で何冊も本を書いている人は稀です」

 入省年次は、件の武藤氏より1年下の後輩にあたる。「主計局にあらずば人にあらず」という財務省の中で、主に主税局畑を長く歩んでおり、「地味な人」という評判もある。

「黒田さんのユニークなところは、経済学だけでなく哲学も研究していることです。しかも、有名投資家のジョージ・ソロスもその影響を受けたという、イギリスの哲学者カール・ポパーなど、かなり特異な方面に研究熱心だったそうです」(黒田氏の知人)

 性格は気さくで愛想がよく、「ヒャヒャヒャヒャ」と一風変わった笑い声を上げるが、女性からは、「あれが可笑しくて可愛い」と慕われることもあるという。

 こう言うと黒田氏は、あまり目立たないが温厚で、教養溢れる書斎派タイプの学者、というイメージになるだろう。

 しかし、いくらなんでもそれだけで、この国難とも言うべき時期に日銀総裁という大役を任せられるはずがない。安倍首相がクロトンに白羽の矢を立てた理由の一つが、温厚そうな表情の裏に隠された、「マフィア」な一面だったという。

「安倍首相は、世界の金融を牛耳りコントロールする外国の金融行政のトップたちを『金融マフィア』と呼んでいますが、黒田氏はああ見えて、非常に頑固でタフなところがある。彼なら、そのマフィアたちと互角に渡り合えると思ったからです」(別の財務省OB)

マフィアと互角に戦う頭脳

 そもそも、黒田氏が財務省では傍流とも言える主税局→財務官というコースを辿ったのも、信念を曲げない、〝ガンコさ〟が原因だったと言われている。

「財務官時代には、後に後任となる溝口善兵衛国際局長(当時、現島根県知事)と、金融政策を巡って激しくやりあいました。財政規律・バランス重視で極めて保守的な通常の財務官僚たちとは一線を画し、黒田氏は積極攻勢派。金融緩和についても、『結果的にムダになってもやってみる、そういう姿勢を見せることに意味がある』というタイプ。それ故に省内では次官レースから外れていましたが、その姿勢がアベノミクスの中ではあらためて評価されたことになるでしょうね」(全国紙経済部デスク)

 実際、黒田氏はだいぶ以前から、デフレ潰しに本腰を入れようとしない日銀の消極的姿勢に対し公然と批判を繰り返してきた。

「諸外国のように、(インフレ)ターゲットをはっきり掲げ、それを実現するための政策を強化するべき」「金融緩和を徹底すべきだ」('12年6月4日付「朝日新聞」紙上での主張)

 国際金融の世界で、トップと言えるのは米国FRB(連邦準備制度理事会)のベン・バーナンキ議長だ。このバーナンキ議長や、ECB(欧州中央銀行)のドラギ総裁らの発言は、一夜に為替相場を数円も乱高下させるほどの威力を持つ。

 強力な金融緩和でデフレ退治を目指すアベノミクスを実現するには、彼ら世界最高峰の〝マフィア〟と対等に渡り合える能力と識見、何より強さが必要だ。

 その点、黒田氏は現在の日本でほぼ最高レベルの人材という呼び声も高い。

「財務省国際金融局長、財務官、そしてアジア開発銀行総裁として、黒田さんの名前は日本国内より世界の金融界で知れ渡っています。これからの中央銀行総裁は、英語を流暢に話し、経済学の博士号かそれに準じる資格を持つのが最低限の条件ですが、黒田さんは簡単にその条件をクリアしています。

 さらに言えば、FRBのバーナンキ議長とも深い親交がある。最近、バーナンキ氏は『デフレ脱却を目指す日本の政策を支持する』という異例の発言をしてマーケットを驚かせましたが、黒田氏が日銀総裁の有力候補になったことと無縁ではないと思われます」(別の財務省中堅官僚)

 戦場と言われる世界の金融市場で、各国の最高司令官たちに並んで見劣りしない頭脳の持ち主。それが、黒田氏の評価なのだ。

 アベノミクスの行方には、日本の命運がかかっていると言っても過言ではない。日銀総裁となる黒田氏には、それを託す手腕があると信じたい。

「週刊現代」2013年3月16日号より

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