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ITトレンド・セレクト
2013年03月14日(木) 小林 雅一

AmazonやAppleが準備する「電子コンテンツの中古市場」とその対策

 このReDigiのサービスにしても、AmazonやAppleが取得、ないしは取得申請した特許にしてもデジタル・コンテンツのコピー制限がポイントになっている。すなわち手持ちのコンテンツを誰かに「売った」ユーザーのコンピュータ(の記憶装置)からは自動的にそのコンテンツが消去される(仮にクラウド型のサービスであった場合には、コンテンツの利用権が次のユーザーへと移行する)。

 これによって、あるユーザーから別のユーザーへの「コンテンツの受け渡し」、つまり両者間での「交換」という行為が実現され、(かつて欧米や日本などで違法判決が下された)ファイル共有システムのような、デジタル・コンテンツの無限増殖が回避されることになる。

恐怖に震える出版社や作家

 が、それでも米国の出版業界や作家組合などは、「この事態に戦慄している」と上記ニューヨーク・タイムズの記事は報じている。業界の専門家は、「デジタル・コンテンツの中古市場は、その当初こそユーザーには歓迎されるだろうが、長期的には作家や音楽家を消滅に追い込むことから、誰にとっても不利益をもたらす」と予想している。

 実際にどうなるかは、そうした中古市場が合法化され、普及してからでないと分からないが、それでも現時点で出版社や作家が「戦慄」する気持ちは十分理解できる。と言うのも、ReDigi、あるいはAmazon、Appleなどによる中古市場は、音楽CDのような単なるデジタル・コンテンツというより、より正確には「オンライン・コンテンツの中古市場」と呼ぶべきものだからだ。

 そこではユーザー間のコンテンツ売買は、マウスのクリック操作数回で瞬時に実行される。つまり中古取引が従来よりも格段に容易になる上、コンテンツの劣化は全く生じない。要するに「中古」とは名ばかりで、事実上の新品が値下げされて次のユーザーに渡されることになる。「こんなサービスが巷に広がれば、そもそも新品のコンテンツを買おうとするお人好しはいないだろう」と予想する専門家もいる。

 もっとも新品のコンテンツを販売するAmazonやApple自身が中古市場を創設する準備を始めている以上、彼らはそうした最悪のシナリオは回避できると見ているはずだ。確かに理想的には、音楽なり書籍なり、あるコンテンツを購入したユーザーは、それが気に入れば、手放そうとはしないだろう。あるいは仮に手放すにしても、それは相当長い時間、コンテンツを消費した後になるだろうから、その時間差が中古市場を許容する合理的な理由となり得る。

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