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特別座談会 橋爪大三郎×大澤真幸×本誌中国担当デスク「おどろきの中国」 日本人が中国を理解できない理由

あの国の人たちは何を考えているのか。中国に関するニュースに接する度に、首を傾げる方も多いだろう。「厄介な隣国」を正しく読み解く方法を、ベストセラー『おどろきの中国』の著者2人に訊いた

自己主張が激し過ぎる

本誌 まずは一番ホットな尖閣問題について伺います。昨年からの度重なる領海侵犯に始まり、昨年12月13日に領空侵犯を行い、今年1月19日と30日には、中国の艦船が海上自衛隊の護衛艦にレーダーを照射する事件まで起こりました。そしていまだに、領海侵犯が止んでいません。なぜ中国はこのように挑発行為を加速化させているのでしょうか。

橋爪 まず、尖閣諸島は「岩のかたまり」であって、利用価値はない。その下に資源があるとか、領海の問題とか言うが、大したことはない。それより大きいのは中国の「メンツ」の問題です。

大澤 死活的な利害が絡まっているのではなく、プライドの問題なのですね。「メンツ」が立たないと、中国政府は他国に対してだけでなく、自国民に対しても困る。日本も同様のことはありますが、中国の方がより厳しい状況に立たされている。

 中国政府がなんとか譲歩できる状況を作らないと、尖閣問題はなかなか解決しません。そこを日本は理解し、外交をしなければいけない。

橋爪 尖閣問題は'72年の日中国交正常化の時からあった。解決が難しいので、棚上げすることで双方合意していたのです。以後それでうまくいっていたものを、野田政権がとんちんかんな対応で事態をこじらせてしまった。

大澤 わざわざ国有化する必要はなかった。できるだけウヤムヤでいい。東京都が買うなら買うで、その段階で止めておけばよかったのですが、国有化することで中国にとっては抜き差しならない問題になってしまった。

本誌 安倍政権に変わっても、レーダー照射事件などが起こって、事態は好転するどころかさらに暗転しています。

橋爪 レーダー問題では中国外交部は「初めて聞いた」などと言っていた。これは、軍を党がコントロールする中国の原則からするととても不可解なことです。党や政府が知らない間に解放軍が現場でレーダー照射するはずがない。

大澤 しかし、中国政府がレーダー照射を「していない」と言い、「何かの間違い」だと言うのは、「問題を拡大させたくない」というメッセージでしょうね。

橋爪 そうです。それなら日本政府は「ではよく調べてください」と言えばそれで済んだのです。ところが、「こっちには証拠がある、出る所へ出てもいい」みたいに、子どものケンカのようなことを言ってしまった。これでは中国政府は引っ込みがつかなくなるでしょう。

大澤 中国政府の内部で何が起きているのかという分析が欠けていましたね。

橋爪 ところで、中国とか中国政府とか言いますが、中国にはそもそも統一した国名がなかった。秦、漢、唐、明、清・・・・・・。なぜ統一した国名がないかと言えば、自分の国は世界の中心だから必要なかったわけです。だから「中央」という国名にならない国名しかない。いわゆる中華思想です。

大澤 なるほど。中国人の秩序や統一の作り方は、日本人とは全然違いますね。日本人は「場」の雰囲気に合わせますが、中国人は自分が中心です。われわれが中国に行った時も、タクシー運転手の自己主張に辟易しました。それでも、一応統一がとれているところがおどろきです。

本誌 本当に日本人から見ていると、中国人は自分勝手なところがありますね。そんな自己主張の強い中国人たちは、2月に10億人も春節で帰郷するという「民族大移動」を果たし、いままた深刻な大気汚染に見舞われ、その影響が日本にも出ています。

橋爪 大気汚染は困ったものだが、あんな状態なのになぜみんなが文句を言わないかというと、所得がみるみる増えていて、将来の希望がある。しかも政府に異議を唱える反対派になっても、1円の得にもならない。

大澤 凄まじい汚職の問題も同様ですね。汚職や賄賂は伝統的な中国の行動様式からくる面が強いと思いますが、「資本主義」化したために、汚職も深刻化した。

橋爪 市場経済になってから、腐敗や汚職は桁違いの規模になった。昔の腐敗や汚職はかわいいものでした。「松下の大型カラーテレビが届いた」というレベルです。

 でも、2年前に捕まった劉志軍鉄道部長(鉄道相)の汚職金額は数十億人民元(1元=約15円)だった。桁が違うんですよね。鉄道部長は全国新幹線建設の権限を持っているから、キックバックが数%でも凄い儲けになる。

本誌 汚職の金額で言うと、温家宝首相夫人の不正蓄財はおよそ24億・(約2000億円)、失脚した元重慶市のトップ・薄熙来の不正蓄財はおよそ500億元(約8000億円)と、上には上がいます。

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