「息子と僕のアスペルガー物語」 ライフ
奥村隆「息子と僕のアスペルガー物語」【第20回】
最高の職場と、空気を読まない超優秀な先輩たち

【第19回】はこちらをご覧ください。

「君の頭の中には、宝の山がある」

 どの会社へ面接に行っても落とされまくり、ずっと沈んだ気持ちで就職活動を続けていた大学4年生時代の僕。それは、今にして思うと、ASD(自閉症スペクトラム障害)を抱える者に特有の「空気を読めない」「相手(面接官)の気持ちに配慮できない」「細かいことばかりにこだわって話す」といった傾向によるところが大きかった。

 とにかく、面接を受けるたびに、その会社にとってタブー的な話題や社員が嫌がりそうな話題を滔々(とうとう)と語ったり、細かいことで面接官の矛盾を追及したり、無意味な議論をふっかけたりしていたのだ。しかも、そういうときは、自分が結構いいことを言っているつもりでぺらぺら喋っていたのだから、もう救いようがない。会社としては、真っ先に落としたくなる人間だろう。

 そんなお先真っ暗な状況で、Kさんというサークルの先輩を訪問したときに会ったテレビ局の人たちが、僕を救ってくれた。自分が欠点だらけの"ダメ人間"なのではないかと悩む僕に対し、彼らは「それは欠点ではない。個性だ」「君が欠点だと思っていることこそ、テレビの世界では長所なんだ」などと励ましてくれたのだ(前回参照)。

 感激した僕は、テレビ業界をめざすことにした。やはりいろいろとテレビ関係の会社の面接を受けたのだが、細部にこだわる点や記憶力が良い点などが評価されたらしく、数社で一次面接を突破することができた。

 「私は昔の『ザ・ベストテン』の順位をかなり覚えています」と言うと、メーカーや金融機関では「気持ち悪い男」「おたくっぽい奴」として面接官に"引かれて"しまうが、テレビの世界の面接官は「へぇ、凄いね」と逆に身を乗り出してくる。そこから昔の歌謡曲シーンの話になり、僕が楽しそうに、かつ極めて正確に当時のことを語るので、面接官もあれこれ思い出を話し始め、面接というより雑談のようになって大いに盛り上がったりもした。

 スポーツの記録集の中身を暗記している話をしても、「そんな何の役にも立たないことにエネルギーを使うなんて、少しおかしいんじゃないの?」という反応を返してくる人が多いが、あるテレビ局の面接では、面接官から「君は本当によくいろいろなことを覚えているね。頭の中に宝の山があるようなものだなぁ」と感心された。

 「宝って何ですか?」と尋ねると、「企画のネタだよ」という答えが返ってきた。