「北の核実験」で浮き彫りになったもうひとつの側面を日本のメディアは見逃している---TPPはアジア・環太平洋地域の外交安保問題だ!
〔PHOTO〕gettyimages

 朝鮮半島情勢が一段と緊迫している。北朝鮮が朝鮮戦争休戦協定の白紙化に言及する一方、ニューヨークでは国連安全保障理事会が7日(日本時間8日未明)にも、対北制裁を大幅強化する決議案を採択する見通しだ。

 私は2月15日付コラムで、北朝鮮が昨年12月のミサイル発射実験に続いて3度目の核実験を成功させたことで「安全保障をめぐる従来の前提が一変し、まったく新たな次元に突入した」と書いた。そのうえで日米韓が合同軍事演習をするケースを例に挙げて、日本の「集団的自衛権の見直し問題が喫緊の課題になる」と指摘した。

 その後、事態はどう動いたか。コラムを公開してから1週間後の2月22日、日米首脳会談が開かれた。そこで安倍晋三首相とオバマ大統領は次のような認識で一致している。

北朝鮮問題とTPPがどう絡むのか

 「両首脳は…北朝鮮の核実験に対する懸念を共有し」た(外務省ホームページ、以下同じ)。そのうえで、安倍首相は「北朝鮮は核開発、ミサイル開発を進めてきており、この現実に対して、改めて日米韓が一致結束して対応する必要がある旨述べた」という。

 北の核開発に対応するのに鍵を握るのは、日米韓という認識である。六カ国協議のメンバーである中国やロシアももちろん重要だ。しかし、まずは米国をハブにして互いに同盟関係にある日米韓なのだ。これが議論の出発点である。プレーヤーがだれか、という話をはっきりさせなければ、次に進めない。

 安倍は続けて「国連安保理が新たな強い決議を採択して制裁の追加・強化を実施することが重要である」と述べている。今回の国連決議はこの線に沿ったものだ。ここまでは、ごく自然な流れだろう。

 先のコラムで、私は「今回の事態は環太平洋連携協定(TPP)参加問題にも影響を及ぼす」とも指摘した。読者の中には「北朝鮮問題とTPPがどう絡むのか、関係ないのでは」と疑問を抱いた向きがあったかもしれない。だが、深い関係がある。

 コラムで書いたように、TPPは貿易自由化という通商問題であると同時に、米国を中心としたアジア太平洋の外交安保問題という2つの側面をもっている。これまでは貿易自由化論議の陰に隠れて見えにくかったが、貿易が国同士の相互依存を促すという根本原理を考えれば、貿易はもちろん国同士の関係安定化、すなわち外交安保につながっていく。

 米国がTPPによってアジア太平洋地域の団結を強化しようというときに、北朝鮮がまさに核実験を成功させた。北の核によってアジア太平洋(直接的には米国と韓国、日本)の平和と安定が現実的に脅かされ始めた以上、米国が対抗策としてTPPをてこに日本その他の国との結束を強めようと考えるのは、まったく合理的である。

 これまでTPPは貿易自由化という側面ばかりで語られてきた。だが、北の核実験によって否応なく外交安保の側面が強くなってきたのである。

この続きは、プレミアム会員になるとご覧いただけます。
現代ビジネスプレミアム会員になれば、
過去の記事がすべて読み放題!
無料1ヶ月お試しキャンペーン実施中
すでに会員の方はこちら