政治政策
民主党内「良識派」は日銀正副総裁人事をチャンスにして「分党」を狙え!

 注目の日本銀行の正副総裁人事の国会承認プロセスが始まった。さる3月4日、5日、総裁候補の黒田東彦(はるひこ)氏と、副総裁候補の岩田規久男氏、中曽宏氏、の所信表明とこれに対する質疑が衆議院で行われた。

 衆院は与党が絶対多数なので、政府の人事案の通過は間違いなく、山場は、舞台が野党多数の参院に移る来週だ。

 三氏はいずれも、積極的な金融緩和を行い、2年以内に物価上昇率2%を達成するよう全力で努力すると述べたが、特に、黒田氏と岩田氏の発言には、「デフレ・ファイター」として「本物」であるか否かの軽重の差が出た。

 ポイントは質疑に於ける、日銀法改正への見解と、2年で目標が達成できなかった場合の責任に対する答えだ。

やっぱり「官僚」だった黒田氏の国会発言

 黒田氏は、日銀法については「国会が決めることだ」と逃げた。目標未達時の責任の取り方については「説明責任がグローバルスタンダードだ」と、こちらも曖昧に終始した。

 他方、岩田氏は、日銀法改正が必要であり望ましいとの立場を明確にし、「日銀法の改正が物価目標の実現を容易にする」と述べた。また、目標未達時の責任の取り方については「最高の責任の取り方は辞職することだ」と述べた。

 ともに金融緩和に積極的で、目下、株式市場などの資本市場では支持されている方々だが、軋轢を避け責任を曖昧にしようとする黒田氏が「所詮、官僚なのだなあ」という残念な人の印象を与えたのに対して、岩田氏は明快であった。

 仮に、両氏の答弁が、それぞれ日銀総裁として国会で述べたものであれば、市場に対する効果の差は歴然と異なるはずだ。岩田氏の方が総裁候補でなかったことが、たまらなく惜しいと思われる今回のやりとりだった。

 さて、安倍首相が唱道する「アベノミクス」を囃(はや)して株価が上昇し、円安になっていることが後押しして、安倍政権は、政権成立後2ヵ月が経過したにもかかわらず、政権発足当初よりも世論調査の内閣支持率が上昇する、近年の内閣としては異例の追い風に包まれている。

 一方、総選挙で大敗してから民主党の影が薄い。こうした中、現時点では最大野党である民主党が焦りを覚えることは、一面で納得できる。

 しかし、民主党の存在感を示すために、日銀の正副総裁人事に参議院で反対しようという意見がまだあることには驚く。民主党の対応方針はまだ分からないが、特に、岩田氏の副総裁就任に反対する意見があるようだ。アベノミクスを支える理論的なリーダーの一人である岩田氏を支持した場合に、「アベノミクスを認めたことになる」ことが理由だという。

 反対するならむしろ黒田氏に対してだろうと思うところだが、すっかり「親・財務省」となった今の民主党に、もともとその気はないのだろう。

 尚、本稿の主題ではないが、これまでデフレを継続してきた日銀のプロパーの出世頭である中曽氏が、過去の日銀の行動に対する十分な批判をしないまま、口先だけ金融緩和に賛成だといって、すんなり副総裁に納まるのはいかがなものか。

 事の当否はともかく、岩田氏の副総裁就任だけなら、民主党は反対しやすいかも知れない。日銀総裁空席という経済危機管理上の失態だと批判されかねない大勝負を避けて、副総裁ポストにケチをつける程度で存在感を示す戦術は、「貧して、鈍した」カオス状態にある今の民主党なら十分採用しかねない。

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