あの「ごぼう茶」を生み出した「商人」が取り組む「逸品」創りの極意とは ~熊本県菊池市「渡辺商店」の6次産業化ストーリー
自ら開発した純米吟醸酒「菊池川」を手に上機嫌の渡辺義文さん

 「モノを仕入れて売るだけなら商人ではない。売人でしょう。オンリーワンの逸品を年に3つでも4つでも創り出してお客さんに売っていく。それが本当の商人だと思います」

 熊本県菊池市にある「渡辺商店」の渡辺義文さんは酒小売店の3代目。商店街はご多分に漏れず「シャッター通り」で、渡辺商店はさらに一本路地を入ったところにある。

 それでも渡辺さんは意気軒昂だ。独自に開発した商品を直接インターネットで消費者に販売。昨年の年商は何と2億円。前の年から6,000万円も増えた。店を継いだ時には家族以外に1人だった従業員は、今や18人。経済停滞の町で新たな雇用を生んでいる。

 渡辺さんが手がける「商い」は独特だ。地元で埋もれている豊かな食材に目を付けて農家から買い、時には地元の業者に持ち込んで加工、その様子をインターネット上で事細かに消費者に伝えることで共感を引き出し、買ってもらう。基本は「自然」。無農薬栽培や有機栽培、無肥料栽培といったオーガニック・フーズだ。渡辺さんが運営するネットショップ「自然派きくち村」の商品を覗いてみれば分かるように、商品それぞれにストーリーがある。

 「それぞれのプロが、同じコンセプトの中で1つにまとまる。それが本当の6次産業化だと考えています」

 渡辺さんは、3次産業である「商人」が、1次産業の作物づくりから、2次産業の食品加工までを取りまとめて「逸品」さえ創り出せば、必ず売れると信じている。いわば6次産業化の総合プロデユューサー役を務めているわけだ。

元祖「ごぼう茶」

年間3万個、3,000万円を稼ぎ出す"逸品"

 初めから順風満帆であったわけではない。渡辺商店の飛躍には大ヒット商品の存在がある。

 「ごぼう茶」だ。今や全国的な大ヒット商品となっているが、6年前、"全国で初めて"製造・販売したのが渡辺商店だ。もともとのきっかけは、地元の名産品だった「水田ごぼう」を使って、何か加工品が作れないかと考えたこと。菊池は米どころとして知られるが、水田ごぼうはその裏作として作られている。

 ごぼう茶が完成し、細々と販売を始めてから3年ほど経ったある日のこと。フジテレビの『人志松本の◯◯な話』という番組で、「若返りするマル秘ゴボウ茶」として渡辺さんのごぼう茶が紹介されたのだ。すると番組放送中に注文が殺到、すぐに「売り切れ」の表示を出したものの、瞬時に600個を売り切ったという。それからの1週間というもの、徹夜で発送作業に追われたそうだ。

 「1週間もしたら全国各地からごぼう茶が発売されて、もうびっくり」

 そこから全国的な大ヒット商品に育っていった。それでも渡辺さんは無理な製造拡大はせず、「自然派」の素材にこだわった。菊池産の水田ごぼうを使ったごぼう茶は「元祖ごぼう茶」として今でも人気商品。ごぼう茶だけで年間3万個、年商で3,000万円を稼ぐ。

 逸品作りの原点は2001年。もともと免許業種で守られてきた酒小売業だが、規制緩和でコンビニやスーパーでも酒が売られるようになり、このままではいずれ渡辺商店は廃業に追い込まれる、と渡辺さんは考えていた。そんなある日、環境問題の講演を聴いて、本物の自然志向の食べ物を作ろうと思い立ったのだという。

「ただただ自然」がキャッチコピーの米焼酎「蔵六庵」

 自ら田んぼを借りて米作りを始めた。29歳の時だ。「地域にはすごい爺ちゃんがいるもんで、後藤さんという方の言う通りに米を作った」という。もちろん無農薬栽培である。そしてその米が九州米サミットの食味品評会で最優秀賞を取ったのだ。「伝統の力を見せ付けられた」と渡辺さんは振り返る。

 ところが、その米は4俵しか売れなかった。

 転んでもただでは起きないのが渡辺流。その米を球磨焼酎の蔵元である熊本県人吉市の「那須酒造場」に持ち込んだのだ。家族経営の小規模ながら数々の賞に輝く本物志向の蔵元だ。そして生まれたのが「蔵六庵」という米焼酎。ラベルには「ただただ自然」と書き入れた。

 これをネットに載せたところ800本が売れた。このとき渡辺さんは「売りたいものが作れる」ということの喜びを満喫したのだという。

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