[プロ野球]
上田哲之「一流へのハードル ~中田翔と堂林翔太~」

スポーツコミュニケーションズ

中田翔の残された課題

 で、ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の話になる。始まってしまえば、日本代表を応援するだろう。それがナショナリズムというべきものか、あるいはかつて精神科医の香山リカさんがおっしゃった「ぷちナショナリズム」なのか、それは知らない。あらゆる社会的行動には、必ず政治的傾きが含まれるとすれば、日本を応援するという態度にも、何かそういう要素はあるのかもしれませんね。ただ、当の本人は、もっと素朴に、日本野球を応援しているつもりなのだが。

 WBCの打撃コーチ・立浪和義さんが、熱心に中田を指導したそうだ。そして、ステップをすり足にした。日本代表(侍ジャパン)の強化試合を見る限り、このフォームは当たりではないか、という気がする。昨年のステップより、タイミングが、なんというか、しっくりくる感覚がある。

 立浪コーチあっぱれ。ついに中田は自分の打法にたどり着いた――と思った。ところが、強化試合では、いまひとつ結果が出ない。ヒットは出たけれども、スカッとした当たりではない。スイングはいいと思うのに、これはなぜなのだろう。

 2月26日の日本代表vs.阪神の壮行試合。5回表のことである。阪神の投手は白仁田寛和。打席に立った中田は、軸足側がピタッときまって動かない。それで、すり足ステップ。打てる形だと思うがなぁ。結果は、アウトローのストレートをピッチャーゴロ。続く打者は角中勝也。インハイのストレート系を見事にとらえて、ライトオーバーの三塁打。うーん。その違いは何だ?

 ここで、解説の古田敦也さんが素晴らしかった。
「中田君は、スイングはいいんですけど、カウント1-1からアウトロー低め(のはずれ気味のボール=引用者注)をついつい打っちゃうのは、よくないところ。振りにかかったら止まらない。角中は、しっかり打てる球を待って打っている」

 これですね。さすが古田さん。おそらく、スイング自体はいいのである。しかしいくらスイングがよくても、「ついつい打つ」打者は大成しない。ここからは、私なりにさらに言いつのれば、もしかして、これは一流になれる打者となれない打者の分水嶺を言い当てた言葉ではないだろうか。