橋上秀樹 WBC戦略コーチ
「選手の迷いを断つ。それが私の仕事です」

さあWBCだ! その1
メジャー組参加ゼロについては、「日本の実力を示すいい機会。レベルの高さを証明します」と力強く語った〔PHOTO〕濱﨑慎治

「私の一番の役割は選手の迷いを消してあげること。それは日本代表であっても変わりません」

 3月2日に始まる第3回WBCの侍ジャパン3連覇のキーマンは、この男かもしれない。日本代表戦略コーチ・橋上秀樹(47)。楽天・野村克也監督のもと、ヘッドコーチとして「データを駆使した野球」を徹底的に学び、昨季から巨人の一軍戦略コーチに就任。ペナントレース開幕から出遅れたチームを建て直し、夏場以降の独走に大きく貢献した手腕は、今大会でも間違いなく頼もしい武器になる。アメリカ、キューバ、韓国などライバル国との戦力が拮抗しているだけに、彼の決断が日本の勝利を左右する可能性は大いにある。国際大会での実績は未知数だが、豊富な経験がそうさせるのだろう。WBC開幕を前にした橋上コーチの口調は終始、よどむことはなかった。 

「たとえばバッターが打席に立つとき、どんな選手でも一球、一球、『次に何がくるのか』と迷いながら待っているんです。とくにジャイアンツは迷う選手が多かった。それはレベルの高いバッターが揃っているからなんです。彼らはその能力ゆえ、すべての球に対応できると勘違いしてしまう。相手が力の劣るピッチャーであれば、それでも結果を残せますが、各球団のエース級と対戦するときはそうはいかない。すべての球に対処しようという考えでは、なかなかいい結果は得られない。狙った球以外は捨てる。その踏ん切り、割り切りができるようにし向けるのが私の仕事です」

 ジャイアンツでは最初から受け入れられたわけではなかった。新設のコーチ職という部分に加え、一軍で活躍するようなプレーヤーはみな、強いこだわりを持っている。ましてや強制などできるはずもない。そこでコーチの橋上はコミュニケーションを図りながら選手をじっくりと観察した。なかでも、阿部慎之助は、試合中、ベンチで橋上と常に会話を続け、打率、打点の2冠に輝いた。

「選手は十人十色で、いろいろな性格の選手がいます。こちらから積極的に言っていい選手もいれば、逆に聞いてくるのを待たなければいけない選手もいる。みんないままでやってきたスタイルにこだわりがありますから、私のアドバイスを聞いてもらうために、自分なりにアプローチの仕方や、伝え方を選手ごとに変えながらやっていきました。信頼関係がないと、どんなことを伝えても、選手は上手く活用できないですからね」

 日本代表はさらに強いこだわりを持っている選手の集合体。しかも、今回は与えられた時間がかなり短い。彼はどのようにして信頼関係を築き上げようとしているのか。