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「アベノミクス」の強力な援軍は、次期日銀総裁・黒田氏と旧知の間柄である"国際金融マフィア"のドンだった!
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 次期日本銀行総裁就任が確定した黒田東彦アジア開発銀行(ADB)総裁(元財務官・1967年旧大蔵省入省)が、安倍晋三首相がオバマ大統領との首脳会談を終え帰国した2月24日夕方の翌日、密かにワシントンに向けて発ち、28日に帰国していた事実を知る者は殆どいない。当人は認めないだろうが、同地で旧知のベン・バーナンキ米連邦準備制度理事会(FRB)議長と極秘裏に会談していたのはほぼ間違いない。

 バーナンキ議長は26日、米上院銀行委員会で安倍首相が主導する金融緩和路線について「為替目的ではない」「デフレ脱却目指す試みを支持する」と証言した。25日に判明した総選挙結果によるイタリア政情不安から円が急伸し1ヵ月ぶりに90円台をつけ、東京株式市場の日経平均株価も260円安となった。

 だが、このバーナンキ証言によって東京株式市場は反騰し、株価1万1,500円台を回復した。これが黒田氏極秘訪米の目的ではなかったのか。因みに、黒田氏は旧大蔵省官房参事官(国際金融局担当)時代、当時プリンストン大学教授であったバーナンキ氏と知り合ったという。両者の関係は永くて深い。

 安倍氏がいま好んで使う「国際金融マフィア」という言葉に倣えば、米国の中央銀行総裁であるバーナンキ氏は、まさにその国際金融マフィアのドンである。それだけではない。黒田氏が国際局長(旧国際金融局長)を経て財務官に就任した1999年当時のバーナンキ氏はすでにフリードマン学説の信奉者として知られるだけでなく、「ヘリコプター・ベン」の異名を取る熱烈なデフレ脱却論者であった。先のバーナンキ証言は、「アベノミクス」(安倍政権経済政策)にとって強力な援軍となったのだ。

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日銀総裁人事はADB総裁人事とコインの裏表

 ところで、日銀総裁人事を巡るマスコミ各社の熾烈な報道合戦がこの間繰り広げられたが、『産経新聞』(2月10日付朝刊)が「日銀総裁、黒田氏が有力」と報じたのが最初であり、この報道は安倍官邸を震撼させた。もちろん、安倍氏が8日の衆院予算委員会で次期総裁の条件として「国際金融マフィアのサークルの中のインナーとなり得る能力も重要である」と答弁したことで、官邸・財務省関係者の間で「総理の意中の人は黒田氏ではないか」と囁かれたのは事実である。

 1月中旬頃は安倍首相の意中の人は、岩田一政日本経済研究センター理事長(元日銀副総裁・経企庁出身)であったことは間違いない。ところが、盟友・麻生太郎副総理・財務金融相が財務省挙げてバックアップする武藤敏郎元財務事務次官(現大和総研理事長・66年)を推し、最側近の菅義偉官房長官は野党対策の観点から岩田(一)氏を強く推薦していたことから、安倍首相が両有力候補を外して「黒田総裁」を胸中決めたのが2月初旬だとされる。そこへ降って沸いたのが先述の産経報道である。

 マスコミによって人事案が報道されると、その人事は潰されるというのが永田町・霞が関の常識であり、その火消しが必要であった。ここで動いたのが、黒田氏とは旧教育大学付属駒場高校、東京大学法学部で同級生であった細田博之自民党幹事長代行である。細田氏は直ちに、これまた高校、大学が一緒だった外資系生保会社のトップにいる人物を使い、「細田は、黒田はないと言っている」と市場関係者にリークさせたのだ。これが奏功して黒田説は沈静化した。

 その後の報道は、「武藤 vs 岩田(一)」が最有力候補であるというトーンに変わっていった。日銀総裁人事はADB総裁人事とコインの裏表関係にある。さらにそこに安倍訪米=日米首脳会談がリンクしていたのだ。

 オバマ大統領から「アベノミクス」評価を引き出すには、政府と日銀が一体となって金融緩和路線を推進、日本がデフレから脱却して経済再生を実現できるとオバマ氏に納得させる必要があった。だからこそ、安倍首相は異例にも訪米随行団に中尾武彦財務官(78年)を加えて、米側へのメッセージとした。黒田氏の後任ADB総裁には中尾氏が控えているので中国に同ポストを獲られる心配はなない、安心して欲しい、と。

 黒田氏は、実は次期FRB議長が有力視されるティモシー・ガイトナー前財務長官とも大変親しい。ガイトナー氏が在日米国大使館参事官(経済担当)時代からの付き合いで、97年のアジア通貨危機当時、クリントン政権の財務次官(国際経済担当)だったガイトナー氏と黒田国際局長は日本の不良債権処理問題で侃々諤々やり合った関係でもある。

 日銀総裁の任期は5年。安倍首相はオバマ大統領とのトップ会談で日米同盟の再構築を謳ったが、黒田総裁の誕生で今後はバーナンキ議長(ガイトナー次期議長?)との間で日米通貨同盟も構築されるのだ。安倍氏の「強運」は本物である。

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