野球
二宮清純「ヤクルト“伊勢大明神”、秘密の引き出し」
ヤクルト、近鉄、巨人のコーチとして5度のリーグ優勝に貢献

 東京ヤクルトのヒッティング・コーディネーター伊勢孝夫さんに「伊勢大明神」という愛称をつけたのは、近鉄時代の監督・三原脩さんでした。伊勢さんは不動のレギュラーではなかったものの、起用すると必ずといっていいほどベンチの期待に応える活躍を演じました。そこで三原さんは「伊勢大明神」と呼ぶようになったそうです。

ヒットの3分の1がホームラン

 伊勢さんの打撃成績を調べていて驚きました。それはヒットに対するホームランの比率の異常なまでの高さです。たとえば1969年のシーズン、伊勢さんは73本のヒットを放っていますが、そのうちホームランは16本です。

 しかし、そのくらいで驚いていてはいけません。71年、伊勢さんは84本のヒットで28本のホームランを記録します。ヒットに占めるホームランの比率は3割3分3厘。実に3本のヒットのうちの1本がホームランなのです。この数字は尋常ではありません。狙い球を絞ることに長けていたということでしょう。

 野村克也さんがヤクルトの監督に就任したばかりの頃のことです。ミーティングの席で、傍にいた伊勢さん(当時は打撃コーチ)を見やりながら、こう言ったそうです。
「この人には、いつも打たれてばかり。抑えた記憶がない」

 伊勢さんの勝負強さは、いったいどこに起因していたのでしょう。「野村さんの下でコーチをするまでは野球を深く考えたことがなかった」という伊勢さんですが、野球全体に関してはそうだとしても、打席での読みやピッチャーのクセの見抜き方については独自のものがあったはずです。

 ヤクルトのキャンプ地である沖縄・浦添。ネット裏でお話を聞いていて、その断片に触れることができました。