元外交官が秘密報告書をもとに書いた「韓国への一兆円の援助金」ほか

佐藤優「インテリジェンスの教室」Vol.008 読書ノートより

読書ノート(No.17)

沢木耕太郎 『キャパの十字架』 文藝春秋 2013年

 ノンフィクションの王道である「第三者ノンフィクション」の傑作だ。フォトジャーナリズムの世界で神のように崇められているロバート・キャパが、スペイン内戦時に撮影したとされる「崩れ落ちる兵士」の真実を詳細な取材と強靱な思考力で沢木耕太郎氏が明らかにした。

<私が最後に辿り着いた地点は次のようなものだった。

 (1)「崩れ落ちる兵士」の写真はセロ・ムリアーノではなくエスペホで撮られたものである。

 (2)「崩れ落ちる兵士」は銃弾によって倒れたのではない。

 (3)しかし、「崩れ落ちる兵士」はポーズを取ったわけではなく、偶然の出来事によって倒れたと思われる。・・・(以下略)

このテーマについて深く知るための「連読」3冊
プロパガンダ戦史』 池田徳眞 中公新書 1981年
嘘をつく記憶 目撃・自白・証言のメカニズム』 菊野春雄 講談社選書メチエ 2000年
フランコと大日本帝国』 フロデンティーノ・ロダオ(深澤安博他訳) 晶文社 2012年

読書ノート(No.18)

小倉和夫 『秘録・日韓1兆円資金』 講談社 2013年

 小倉和夫氏(元駐韓大使、東京2020年オリンピック・パラリンピック招致委員会評議会事務総長)は、外務省のフレンチ・スクール(フランス語を研修した外交官)に属するが、アジア外交に関与することが多かった。中国、韓国などアジア諸国の台頭を考慮した新外交戦略を構築すべきであると主張し、外務省内のアジア主義の代表者と見られていた。それ故に外務省の日米安保マフィアにとって同氏は煙たい存在であった。

 本書は、日韓外交の闇に関する貴重な当事者手記であるとともに現役外交官たちに対する「頑張ってアジア外交を立て直してくれ」というメッセージでもある。・・・(略)

 過去の幹部外交官の当事者手記と異なり、小倉氏は、情報公開法を活用して、秘密指定が解除された公電(外務省が公務で用いる電報)、秘密報告書などを入手した上で本書を書いている。もっとも普通のノンフィクション作家ならば、情報公開法を活用してもこれだけの情報を入手することはできない。北東アジア課長として、どこにどういう秘密文書が存在しているかを熟知している小倉氏だから、情報公開法をフルに活用することができたのだ。

このテーマについて深く知るための「連読」3冊
軍政と受難 第四・韓国からの通信』 世界編集部/T・K生 岩波新書 1980年
北方領土交渉秘録 失われた五度の機会』 東郷和彦 新潮文庫 2011年
国家の罠 外務省のラスプーチンと呼ばれて』 佐藤優 新潮文庫 2007年
【佐藤優直伝「インテリジェンスの教室」Vol.008 目次】
―第1部― インテリジェンス・レポート
 ■分析メモ(No.18) 「「森喜朗元首相とプーチン露大統領の会談」」
 ■分析メモ(No.19)「ロシアにおける隕石落下爆発事故」
―第2部― 読書ノート
 ■「1956年ソ日共同宣言の真実の意味」『極東の諸問題』
 ■沢木耕太郎『キャパの十字架』
 ■小倉和夫『秘録・日韓1兆円資金』
―第3部― 質疑応答
―第4部― 文化放送「くにまるジャパン」発言録
―第5部― 佐藤優さんの今後の予定(3月上旬まで)