「発送電分離」も風前の灯!? 原発再稼動問題を先送りし続ける安倍政権の「電力システム改革」に電力各社が拒絶姿勢!
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 もし、これも参議院選挙向けの"実行力の演出"だとしたら、これほど芸達者な政権は過去にないのではないだろうか。経済産業省は、専門委員会がまとめた報告書を盾に、電気事業法の改正方針を花火のように打ち上げながら、肝心の「発送電分離」の実現性が低くなっているのだ。

 元凶は、安倍晋三政権が、議論の発端になった原発問題の方向性を決めずに放置していること。廃炉にしろ、再稼働にしろ、結論を先送りして、今後の経営負担の青写真を描けない状態のまま、すでに火力発電の燃料調達負担で軒並み最終赤字に陥っている電力会社に対して、新たに大きなコストがかかる発送電分離を迫る格好になっているからだ。

 その結果、1年前、「法的分離」という生温い方式ならば、受け入れる構えを見せていた電力各社は態度を一変し、経営と安定供給に悪影響がでかねないとして発送電分離を拒否する姿勢に転じている。

広域系統運用機関の設立は今秋に間に合うはず

 本コラムで以前に取り上げた日本原電保有の原発の廃炉問題なども含めて、これ以上、臭いものに蓋をしたまま、政権に実行力があるかのように振る舞うことは許されない。

 まず、経済産業省の電力システム改革専門委員会(委員長・伊藤元重東大教授)が今月8日にとりまとめた報告書の内容を押さえておこう。

 同報告書の内容を、新聞各紙は「60年ぶりの大改革」(日本経済新聞)と持ち上げたが、これ自体はそれほど大きな前進とは思えない。

 何よりも悠長なことに、①電力会社の地域の枠を超えて電力を融通する「広域系統運用機関」の設立、②小売りの全面自由化、③発送電の分離---の3つの柱の実現に、今後最長で7年もの歳月をかけるとのんびり構えている。

 このうち広域系統運用機関とは、福島第一原発事故と東日本大震災をきっかけに各地の原発が稼働停止した際に、電力各社の地域独占がネックになって電力の融通が円滑に進まなかった反省に立って、より広い地域での電力需給計画を構築し、その融通を実現しようという機関だ。

 筆者は、広域系統運用の必要性そのものを否定する気はないが、そのための機関の設立を2年後の「2015年目途」としている点には首を傾げずにいられない。

 システム開発には1、2年の時間がかかっても不思議はないだろうが、設立そのものは、開催中の今通常国会に根拠となる法改正案を提出、可決さえすれば、十分、今秋に間に合うはずである。

 2000年にスタートしながら、いまだに大口(全体の62%程度)にしか適用されていない「小売りの自由化」の「亀の歩み」の是正も、経済産業省は行わない構えだ。目玉のはずの「全面自由化」を、3年後の「2016年目途」としているからだ。少なくとも、それまでは、一般消費者に「電力会社を選ぶ権利」を認めないということになる。経済産業省とその専門委員会の委員をつとめた"お抱え学者"たちの改革に賭けるスピード感の無さに改めて驚かざるを得ない。

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