官々愕々
悪夢の「増税&バラマキスパイラル」

〔PHOTO〕gettyimages

 本号が発行されるまでに2012年度補正予算が成立しているのかどうかわからないが、この大々的バラマキが止められないのは確実だ。

 この予算のかなりの部分が不要不急のものであることは、先々週の衆議院予算委員会でのみんなの党の柿沢未途議員の政府に対する質疑で明らかになった。政府直轄の公共事業予算のうち、点検と補修に使う予算はわずか4分の1しかないというのだ。あとは、地方で凍結されていた農道建設などの工事だ。

 当初の安倍総理の説明は、「自民党は変わった。バラマキはしない。防災・減災など真に必要なものだけに絞る」ということだった。中央高速道路の笹子トンネル事故を見た国民は、「トンネルが壊れてまた死傷者が出たら大変だから、多少無理して借金してでも早く点検して、悪いところは補修して欲しい」と考えた。当然のことだ。

 しかし、その国民心理を悪用して、あらゆる公共事業が防災・減災名目で計上されている。前にもこのコラムに書いたが、国交省などの官僚たちでさえ「とんでもない水増しのバラマキ」と認める予算が国会でいとも簡単に通っていく。これが、自公に衆議院3分の2の議席を与えた国民への答えだ。

 ならば、せめてこのようなバラマキは今回限りにしてもらいたいと思うが、実は、もう誰にも止められない悪夢の「増税とバラマキのスパイラル」が始まっていることにお気づきだろうか。

 今回の補正予算は大幅に縮小してよい、と筆者は考えている。今やっても遅すぎて、かえって景気の山谷を大きくする可能性が高いからだ。景気は既に底を離れた。元々土建業界は復興特需で盛り上がっている。製造業などの輸出も回復し始めており生産活動は上向きだ。これから徐々に消費増税前の駆け込み需要が拡大する。円安で輸出企業中心に企業収益が上がる。それらの企業ではボーナスも増え、株高の資産効果もあり消費も増えるだろう。

つまり、何もしなくてもある程度景気は上昇するのである。それに加えて、史上最大級のバラマキである。景気の山は本来の実力よりもはるかに大きく盛り上がることになる。

 ところが、今回の補正と'13年度予算の執行が終わる'14年4月には、バラマキ効果が剥げ落ちる上に消費税の8%への増税で消費が大幅に落ち込み、景気が一気に悪くなる可能性がある。

 消費増税で景気が悪化したとなると、10%への再引き上げが難しくなる。引き上げの最終判断をするのは'15年4月頃だから、その頃まで景気を何とか持たせないといけない。従って、'13年度の補正予算で思い切りバラマキをやって、'14年度予算でもこれまでの予算を大きく上回る規模にする。さらに'15年4月を目指して'14年度補正予算でも大盤振る舞いだ。これで'15年春に消費税増税実施の判断が出来るが、'15年10月の再増税に備えて'15年度予算もバラマキになり、10月増税後の落ち込み防止でさらに'15年度補正でバラマキ。'16年度予算の議論の時には'16年夏の参議院と衆議院の選挙の前だから、これも更なるバラマキ。

 この二つの選挙が終わったら、バラマキ続きで増税しても財政は改善しなかったということになる。そこで政治家や財務省が改心するかと言えば、そうはいかない。選挙が終わったらすぐに、次の消費税15%の議論が始まる。13%と15%の2段階増税だろう。

 その後もバラマキパターンがまた待っている。そして、その次は20%への引き上げ。
「増税とバラマキのスパイラル」を誰が止めるのだろうか。

『週刊現代』2013年3月9日号より

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