奥村隆「息子と僕のアスペルガー物語」
2013年02月23日(土) 奥村 隆

奥村隆「息子と僕のアスペルガー物語」【第18回】
どの会社でも嫌われ、転職を繰り返して見つけた「生きる道」

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【第17回】はこちらをご覧ください。

温厚な先輩をキレさせた友人のしつこさ

 「自分は嫌われやすい、浮きやすい人間だ」ということを自覚していなかった学生時代の仲間、Yという男。

前回、彼が大学1年のときの英語の授業で、教官に「黒板に書いた英文を訳しなさい」と言われたとき、その一部しか訳さなかったいきさつは紹介した。彼は「僕は先生が指さした文章だけ訳したんです。何が悪いんですか」と教官に食ってかかったのである。

 もちろん、彼が、僕のようにASD(自閉症スペクトラム障害)の持ち主であるかどうかは、医師の診断を聞いたわけではないので断言できない。しかし、今、その風変わりな数々の言動を振り返ってみると、彼が発達障害を抱えている可能性は非常に高いと僕は考えている。

 Yの言動は、しょっちゅうトラブルや小競り合いを巻き起こし、周囲から誤解されることもよくあった。発達障害を持っていると思われるメンバーが多いサークル「Numbers研究会」の仲間の間ですら、こんな“事件”が起こった。

 大学2年の頃、Numbers研究会の部屋で、Aという先輩とYが口論になったことがあった(このA先輩は、おそらく発達障害を持っておらず、世の中で一般的とされる言動を普通に取れる人だった)。口論の原因はよく覚えていないが、たしか数学のパズルについて、解き方の細部のどれが正しいかといった、はっきり言ってしまえばおそろしく小さな話だった。

 2人は最初、冗談交じりに議論していたが、次第に口調は真剣に、声は大きくなっていった。周囲には僕を含めて十数人のメンバーがいたが、そんなことにはお構いなしだった。

 やがて、基本的には温厚なA先輩も、いつまでも些細なことにこだわり、しつこく食い下がるYの態度にキレてしまい、いきなり「Y、ふざけるな! お前はいつまでもそんなことばかり言っているのなら、もう二度とこの部屋に来るんじゃねえ!」と怒鳴りつけた。

 「すわ、大ゲンカか!?」と、僕たちは固唾を呑んで2人を注視した。たぶん皆、「これは暴力沙汰になるかもしれない」とドキドキしていたに違いない。

次ページ  しかし、それ以上は何も起こら…
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