日本銀行総裁候補は武藤、岩田、黒田の3氏に絞られた!? 「事前報道ルール」撤廃で加熱するスクープ合戦を整理すると・・・
黒田東彦アジア開発銀行総裁 〔PHOTO〕gettyimages

 次期日本銀行総裁を巡るマスコミ各社のスクープ合戦は、いよいよ臨戦態勢に入ったと言えよう。与野党国対委員長協議で「事前報道ルール」が撤廃されたことで、何処が総裁人事をスッパ抜くのかに関心が集中している。

 この間の各社総力戦報道を整理してみよう。口火を切ったのは、2月7日売りの『週刊文春』(同14日号)の「『日銀総裁の覚悟はある』最有力候補岩田規久男教授が本誌に断言」であった。岩田学習院大学教授は同誌インタビューに「今が日本にとって(デフレ脱却の)ラストチャンスです。金融緩和で国を立て直す。自分にとって、最後の仕事だと思っています」と答え、次期総裁への意欲を隠さない。

 次の花火は『産経新聞』(2月10日付朝刊)が打ち上げた。同紙は一面右下に「日銀総裁、黒田氏が有力」の見出しを掲げ、財務省で国際金融を統括する財務官を3年にわたり務めた黒田東彦アジア開発銀行総裁の起用が有力になったと報じた。その根拠として、安倍晋三首相が8日のBSフジの番組で、新総裁の起用条件について「財務省の人は全部ダメという論理はおかしい。国際金融をやっていて金融マフィアと交流がある人もいる」と語ったことを挙げた。

武藤氏は候補から外れたとの見方も

 このスクープ合戦に外国メディアも参入した。15日午後1時過ぎ、ロイター通信が「政府筋によると、日銀総裁人事は武藤敏郎元財務事務次官を軸に最終調整に入った」と配信したことで、一部のヘッジファンドが懸念していた「武藤総裁有力=失望売り」に走って、瞬間風速だったが、日経平均株価は一時240円安となった。翌日の16日には米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(電子版)が次期総裁候補は武藤氏と岩田一政日本経済研究センター理事長の2人に絞られたと報道。

 そして『読売新聞』(2月20日付朝刊)が「日銀総裁人事 大詰め―4氏に絞込みか」との大見出しを掲げ、岩田(一)、岩田(規)、黒田氏に加えて伊藤隆敏東京大学教授の名前を挙げ、みんなの党(渡辺喜美代表)が財務事務次官経験者の起用に反対していることなどから武藤氏は候補から外れたとの見方が出ている、と報じた。

 実は、その日の未明、時事通信社が「政府は日銀総裁人事に関し、財務事務次官OBの武藤敏郎氏と旧経済企画庁OBの岩田一政氏の2人を軸として最終調整に入った」と配信していたのだ。武藤氏の後任総裁の可能性について、読売と時事は正反対の報道をしたことになる。

 この時事通信配信を受けて、20日の早朝、マスコミ数社が大田区の岩田(一)氏邸を朝駆けした(因みに武藤氏は外遊中だった)。そのうちのテレビ朝日記者は手持ちのデジカメで撮影取材を試み、岩田氏が日銀副総裁時代の2006年7月にゼロ金利政策を解除した際に賛成に回ったことを認められないとして渡辺みんなの党代表が「総裁候補として不適格」と言明(19日)したことの感想を求めた。

 ところが、岩田氏は自宅前での取材に対して約30分間、専門用語を駆使したエクスキューズに終始したのだ(同日夜の「報道ステーション」でその一部を放映)。

 次なる新手は、『毎日新聞』(21日付朝刊)だった。同紙は「岩田一、黒田氏で調整―日銀総裁後任、岩田規氏推す声も」との見出しの下で、岩田一政日本経済研究センター理事長、黒田東彦アジア開発銀行総裁の2氏を軸に調整される見通しとなった、と書いた。

 マスコミ各社が人事報道で「○○を軸に最終調整」と表現するのは、確定情報の"一歩手前"の段階を意味する。従って、各社報道で挙げられた武藤、岩田(一)、黒田の3氏に絞り込まれたというのが支配的な見方となる。

 では、本当にその3人の中の一人が本命なのか。悩ましいのは武藤氏を外せないことである。歴代の首相を見ると、財務省(旧大蔵省)を敵に回して政権を維持できた者はいない。というよりも、怜悧冷徹に言えば、同省と上手くやって初めて権力を維持できる。安倍首相は長期政権を視野に入れている。参院選後政局と政権運営を考えれば、当然にも財務省が省を挙げて武藤氏を推していることは無碍にできまい。

 安倍首相がオバマ米大統領との会談を終え、ワシントンから帰国するのは24日午後6時過ぎだ。翌朝の『日本経済新聞』が"確定報道"をするのかどうか、関心を持つのは筆者だけではない。現時点での見立ては「総裁:黒田氏(渡辺博史国際協力銀行副総裁)、副総裁:伊藤氏、副総裁:中曽宏日銀理事(雨宮正佳理事)」であるが、如何に・・・。

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