中国
大連・紅沿河原発始動のニュースから連想する、北朝鮮を巡る悲観的な近未来図
毎時287kWの電力を消費する大連市 〔PHOTO〕gettyimages

 日本ではあまり大きなニュースになっていないが、2月17日午後3時9分、中国の東北三省で初の原発が始動した。大連港の北110㎞に位置する紅沿河原発である。

 2006年8月28日、中国広東原発集団有限公司、中電投原発有限公司、大連市建設投資公司が、45:45:10の比率で出資して、遼寧紅沿河原発有限公司を設立した。

 同社の計画によれば、486億元(約7,300億円)を投資し、大連の地に、2015年までに4基の原発を稼働させる。第一期工事は、2007年8月18日に着工し、今回の試運転にこぎつけ、残り3基も順次、竣工していくという。

 4基すべて稼働すれば、毎時300億kWの発電量となる。700万都市である大連市の2012年の消費電力量は毎時287億kWなので、原発ですべてをまかなえ、かつ火力発電の大気汚染はゼロになるというわけである。

 紅沿河原発では現在、大量の職員を公募している。経理担当の取締役を始め、安全管理エンジニア、消防保衛エンジニア、医者など、46種類もの業種で募集をかけている。

中国と北朝鮮が敵対する時代の脅威

 中国では今後、全国で新たに約60基の原発建設を予定している。現在深刻化している大気汚染の問題を解決するためにも、大量の原発が必要だというのが、習近平政権の方針だ。だが、試運転を開始してからも、大量の職員を公募しているような事態を見ると、「場当たり的経営」が透けて見えるようだ。

 ちなみに、紅沿河原発は東京からは1600㎞の距離である。万一、福島原発のような事故が起これば、放射性物質は偏西風に乗って、日本にも直ちに影響を及ぼす可能性がある。もちろん、いま少しずつ影響が出ているPM2.5などより、格段に危険である。

 この原発の地政学的意味は、日本に近いというだけではない。高速道路で約300㎞行くと、そこは北朝鮮なのである。これは非常に大きな意味を持つ。

 私は一昨年、北京で、ある北朝鮮関係者から、北朝鮮が福島原発の事故を入念に調べていると聞いたことがあった。つまり、日本という経済大国が、たった1ヵ所の原発事故で、これほど危機に瀕するということについての調査だったそうである。

 現在約280発が実戦配備されているといわれる北朝鮮のノドン・ミサイルが、日本の原発を精確に狙えるほどの能力を有しているかどうかは不明だが、特殊工作員が福島まで行って地震被害と同レベルのテロを起こすことなら、もっと容易にできるだろう。

 その意味で、今回の大連の原発始動は、有事の際には中国の原発までもが、北朝鮮の「人質」となる、ということだ。この原発計画がスタートした2006年当初は、中国にとって北朝鮮は脅威ではなかっただろうが、いまは状況が変わった。

 実際、昨年12月12日にミサイル発射実験を行った平安北道の東倉里は、丹東からそれほど遠くない。ということは、この紅沿河原発からも遠くないということだ。

 2月12日に北朝鮮が3度目の核実験を行った後、私は北京のある外交関係者に聞いてみた。すると彼はきっぱりと言った。

 「1950年の朝鮮戦争から続いた中朝間の『血を分けた誼』という友誼関係は、63年後の今年2月12日をもって終了したと考えてもらっていい。これからは『中朝冷戦』の始まりだ」

 つまり、中国と北朝鮮が敵対する時代が始まるのである。

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