ドイツ
イギリスの馬肉スキャンダルがドイツにも飛び火! 馬肉ラザニアや、馬肉シチューの缶詰が、次々と発見される事態に
〔PHOTO〕gettyimages

 イギリスで販売されていた冷凍食品のラザニアに、牛の挽肉の代わりに馬の挽肉が使われていたことが発覚して、大騒ぎになっている。第一報が流れたのは2月8日のことだ。

 イギリスには、競馬やポロといった上流階級の伝統的な娯楽があるし、優秀な軍馬は軍人の誇りでもある。それは庶民の間でも同じで、いうなれば、馬はお友達のようなものだ。それを知らずに食べてしまった人がたくさんいるわけだから、ショックは大きい。

 ドイツでも、馬を食べる習慣はない。数年前、ベルリンの屋台で、馬肉のサラミを販売しているのを見たことがあるが、これなど例外中の例外で、馬肉はおそらくドイツでは、一部のグルメ用かゲテモノのどちらかだ。ドイツ人が馬肉を食用にしたのは、戦中、戦後の食糧難の時代にまで遡らなければならないだろう。

 有名な写真がある。戦争末期、馬が道端で餓死した。そこに、すわ、近所の人が包丁を持って寄ってきて、肉を切り取っている写真だ。そういえば、夫の母からも、当時、一時、馬肉が配給されたことがあったという話を聞いたことがある。しかし義母は、空腹にもかかわらず、飲み下せなかったというから、ドイツ人の馬肉に対する抵抗感はとても強い。

 ところが、イギリスで馬肉スキャンダルが勃発した5日後、ドイツでも、馬肉ラザニアや、馬肉シチューの缶詰が、次々と発見され始めた。それ以来、この一週間というもの、トップニュースといえば馬肉の話ばかりだ。

なんとも複雑怪奇な食肉の流通経路

 ドイツでは、馬は美しい生き物の象徴だ。大きな催し物のある時など、警備のために騎馬警官が出て、すっくと並ぶ光景は、威圧感と壮麗な雰囲気とが相まって、確かにすばらしい。女の子の間では乗馬は憧れのスポーツで、乗馬クラブはどこもかしこも盛況だ。とはいえ、今回の大騒ぎは尋常ではない。まるで、馬肉を食べれば即死するかのようだ。

 ただ、だんだんとその全容が明らかになってくるにつれて、私も驚いた。何に驚いたかというと、食肉の流通経路だ。

 今回のラザニアの場合、次のようになっていたという。

① ルクセンブルクの食品工場Aが、原料の牛挽肉をフランスの食肉販売業者Bに発注

② B(フランス)がその肉をキプロスの食肉販売業者Cに発注

③ C(キプロス)がその肉をオランダの食肉販売業者Dに発注

④ D(オランダ)がその肉をルーマニアの食肉製造業者Eに発注

⑤ E(ルーマニア)が馬肉をB(フランス)に納入

⑥ B(フランス)がその肉を最初の注文主であるA(ルクセンブルク)に納入

⑦ A(ルクセンブルク)がその肉で冷凍ラザニアを製造、ヨーロッパの13ヵ国に出荷

 よくわからないのは、牛肉の注文が、どこで馬肉の注文に化けたのかということだ。現在の調べでは、Aは牛肉を注文しており、ルーマニアの食肉製造業者Eは、馬肉の注文を受けているというから、この両者は無罪。ということは、牛肉の注文を馬肉の注文にすり替えたのは、フランスのBか、キプロスのCか、あるいは、オランダのDということになる。

 フランス政府は、Bが犯人と見ているが、オランダの食肉販売業者Dは、去年も南アメリカの馬肉を牛肉と偽って販売したという前科があるらしく、ここにも濃い疑いが掛かっている。一方、Aは、たとえ牛肉を注文していたにせよ、納品された肉を解凍した段階で、牛肉ではないことはわかったはずなので、ここもグルではないかとも言われており、結局、はっきりしたことは、まだわからない。

 それにしてもこの流通の複雑怪奇なこと! ルクセンブルクの食品工場で使用する肉が、はるばるルーマニアから来るというのも意外だが、それはまだいいとして、何よりも不思議なのは、そのあいだにいくつもの会社が挟まって、書類上だけの取引が行われている実態だ。

 そうこうするうちに、馬肉食品から、馬が注射されていた鎮静剤の残量なども見つかったため、騒ぎはさらに大きくなった。問題の馬は、食用に飼育されたものではなかったのである。

食品工場のラインに流れる鶏肉 〔PHOTO〕gettyimages
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