世界一わかりやすいスティグリッツの経済学
第7回 「取引はお互いの利益を生む」

第6回はこちらをご覧ください。

 ここまで、個人はどうすれば自分の効用・満足感を高くすることができるか、を考え、利己主義的に(自分のことだけを考えて)行動していると説明してきました。

 そのように説明すると、みんな自分勝手に単独行動しているようなイメージを持つかも知れませんね。でもそれは違います。

 経済では誰も一人では生きて行かれません。別に説教臭いことを言っているのではなく、他人と協力しているからこそ、みなさんの生活は豊かになり、便利になっていくということを言いたいのです。ここでは、お互いに協力することで、経済学的にどういうメリットが生まれているのかを説明していきます。

 今日のkeywordはこちらです。「相互依存」、「取引」、「特化」。

相互依存

 世の中の「家計」と「企業」はお互いに関連していて、お互いに「なくてはならない存在」です。企業が作った商品は、家計に買ってもらわなければいけませんし、また家計も企業に労働力を提供し、給料をもらわなければ商品を買えません。「持ちつ持たれつ」なのです。

 みなさん個人は「家計」です。街中にあるお店は「企業」です。みなさんはお店(企業)からジュース、パン、おにぎりなどの商品を買って生活しています。お店(企業)は、みなさん(家計)がいないと商品が売れず、倒産してしまいます。生きて行かれないのです。

 でも、一方で、みなさんがお店で商品を買うお金は、みなさんが企業で働いて(アルバイトして)、給料としてもらっています。家計であるみなさんも、企業がいないと働けず、生きて行かれません。このように、家計と企業はお互いに依存している、「相互依存」の関係にあるわけです。

 カレーライスを食べられるのは、みなさんが家畜を飼育して、野菜を育てているからではなく、スーパーで肉と野菜とカレールーが売っているからです。スーパー(企業)がないと、生活ができません。でもスーパーもみなさんが買ってくれないと経営ができません。まさに「持ちつ持たれつ」なんです。

 そしてこの「相互依存」の関係が成り立っているのは、家計と企業が「取引」をするからです。別に、みなさんと近所のスーパーとの間で、家族愛的な信頼関係が成り立っているわけではありませんよね。

 なぜ「取引」をするかというと、お互いにメリットがあるからです。取引をすれば、みなさんは、自分で家畜を飼育し、畑を耕して野菜を育てなくても、肉と野菜が買えるようになります。企業は、みなさんに肉や野菜を売れば利益を生み出せます。つまり、自分にメリットがあるから、取引をしているだけなんです。それが結果的に「相互依存」の関係になっています。

---結局は、自分のことを考えているだけ、ということか?

 少し冷たい言い方に聞こえるかもしれませんが、取引をするのは、なにも個人的に信頼し合っているからじゃないんです。心情として頼っているわけでもありません。ただ個人と企業が自分の利益を追い求めて「利己主義的に」行動した結果です。それは裏を返すと、個人的な信頼関係がなくても、取引が可能ということです。

 もちろん、特別な信頼関係によって成立する取引もあるでしょう。でもほとんどはそうではありません。みなさんが新しい街に引っ越して、初めて行ったお店でも商品を売ってもらえます。信頼関係が成り立つまで取引できなかったら、世の中は大変なことになりますね。

この続きは、プレミアム会員になるとご覧いただけます。
現代ビジネスプレミアム会員になれば、
過去の記事がすべて読み放題!
無料1ヶ月お試しキャンペーン実施中
すでに会員の方はこちら