人事案のリークを防ぐ「西岡ルール」は、与野党の攻防ではなく政治家と官僚の戦いである!

 補正予算案は、衆議院で可決され、今週から参議院で審議が始まった。与党側は、安倍首相がアメリカに出発する21日中に採決することを目指しているが、少し無理がある。予算案については、これまでも衆参両院で同じ時間審議をしている。衆議院で5日間審議をしているので、参議院も同様であるべきだ。また、日米首脳会談と補正予算案の参議院採決とは何の関係もないし、衆議院を通過している以上、成立は間違いないので首脳会談に悪影響を及ぼす心配もない。

 参議院の意義は、「再考の府」として大所高所から、衆議院で十分な審議が尽くされなかった問題について議論することにある。私が厚生労働大臣だったときにも、参議院で野党から建設的な提案がなされたことが何度もあり、それを修正案や付帯決議に反映させるなどして、国民の利益になるような法律にしたものである。

 選挙の時期が異なる二院制を前提にする以上、両院のねじれは当然であり、政権側には、そのことを与件として国会運営をする智恵が必要である。国会運営が順調にいかないことを制度のせいにするのは簡単であるが、ねじれを克服できない政治家の質こそが問題にされるべきであろう。

「西岡ルール」の重要性

 補正予算は、十分な審議もないまま、拙速主義で21日に成立させるよりも、週明け26日の参議院採決でよいのではないか(25日は、韓国大統領の就任式に閣僚の参加が予想されている)。安倍内閣が、安全運転を心掛けるのならば、野党の反感を買うような強行スケジュールは避けたほうが賢明である

 衆議院では、与党が圧倒的に多数のためなのか、政府側の答弁も緊張感を欠いたものとなっていた。参議院では、もう少し真剣に答弁して、国民の代表が発する疑問や提案にきちんと答えるべきであろう。政権発足時からそのような努力を欠いているようでは、長期政権への展望は開けまい。

 二院制の下で、予算案については、衆議院の優越が憲法で定められているが、普通の法案については、3分の2の多数による衆議院での再可決というルールがある。ところが、36機関253人にわたる国会同意人事については、衆参全く同等の権限を持っており、いずれかの院で否決されれば、人事は成立しない。

 先週の国会で、原子力規制委員長などの人事は承認されたが、次は公取委員長、そして日銀総裁の人事が控えている。これで政府が躓くようであれば、安倍内閣の求心力も衰えることになる。そこで、いわゆる「西岡ルール」の見直しが争点となっている。

 このルールは、2007年10月31日に、衆参の議院運営委員長である西岡・笹川両氏の間で合意されたもので、人事案が事前に報道された場合には提示を認めないというものである。これが、今のマスコミでは、与野党間での対立の図式で報じられているが、それは本質をついていない。また、メディアは、報道の自由、知る権利の制限だという反論をしているが、それもまたもっと大きな問題をとらえていない。

 これは、政と官の戦いであり、天下り先を役人が思い通りに、指定席にしてしまっていることが問題なのである。国会同意人事の対象となるポストに常勤で就くと、1500~2000万円という高額の年収が約束される。オフィスも秘書も車もあてがわれる。常勤とは名ばかりで、毎日出勤するわけでもなく、こんな「おいしい」仕事はない。○○省事務次官経験者は△△のポストに就くという指定席を決めてきたのが、高級官僚たちの天下り戦略なのである。

 天下りポスト確保、拡充戦略として、マスコミにリークして人事案の既成事実化を図っていく---。西岡ルールができる前、つまり2007年の参議院選挙前に、私は参議院自民党政審会長兼国会同意人事委員長に就いていた。その当時は、このリーク(特定の新聞、とくに読売新聞が多かった)が頻発したので、事前報道があった場合、提示を受け付けない方針を出して、役人を牽制したのである。政権側にあった自民党の立場でも許しがたい行為であった。

 これは与野党の攻防でも何でもなく、政と官との戦いなのである。国民の代表である国会議員が官僚をコントロール出来ないようでは、民主主義ではない。国会同意人事について、与野党間の対立や知る権利との関係といった図式で論じていたのでは、もっと大きな問題を見逃してしまうことになる。

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