奥村隆「息子と僕のアスペルガー物語」
2013年02月16日(土) 奥村 隆

奥村隆「息子と僕のアスペルガー物語」【第17回】
「自分は嫌われやすい」という自覚のない友人の悲劇

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【第16回】はこちらをご覧ください。

仕事中に声をかけられるのを極度に嫌がる

 この前の月曜日の早朝、息子の思わぬ言動が、久しぶりに僕たち家族を驚かせた。

 そのとき僕は出社前で、妻や息子より早めに朝食を終えると、前日の職場で終わらなかった仕事を片づけるべく、パソコンに向かっていた。息子は機嫌が良く、笑顔であれこれ喋りながら、おいしそうに朝食を食べていた。僕も妻もその様子を見て、「今日は無事に学校に行ってくれそうだ。よかった・・・」と、ホッと胸をなでおろしていた。

 ところが、朝食を終えた息子は急に何かを思い出したらしく、駆け足で自室に戻った。やがて引き返してくると、キーボードを叩いていた僕のところにまたも慌てて駆け寄り、水糊が入ったプラスチックの小さな箱を差し出した。

 その辺のコンビニや文房具店で売っているような、何の変哲もない水糊である。息子はそれを僕に見せながら、こう尋ねてきた。

 「お父さん、これ、英語で何ていうの? 英語の先生から『お父さんかお母さんか、家族の誰かに聞いてきなさい』って言われたんだ」

 僕は「そうか、今は小学校でも英語の授業があるんだなぁ」と時代の流れを感じながら、さっそく「糊は英語で『ペイスト(paste)』というんだよ」と教えてあげた。我ながら、自分の口調が優しくなっていることを意識していた。

 僕はふだん、家で仕事をしているときに、息子や妻から声をかけられることを極度に嫌う。なぜなら、ASD(自閉症スペクトラム障害)を抱えている僕は、仕事のスケジュールを「分」単位で立てていることが多く、それに狂いが生じると、苛立ちと怒りを抑え切れなくなるからだ。

 ただし、医師によれば、僕が仕事中に声をかけられるのを嫌がる理由は、他にもあるらしい。ASDを持つ人間は、予定を変更されると感情が激しく波立つだけでなく、「同時に2つのことを行うのが苦手」という特徴もある。その点も大きく影響しているのではないか、と医師は説明してくれた。

次ページ  確かに、先日見たテレビ番組で…
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