日銀総裁人事を巡る駆け引きがいよいよ熾烈に! 海外メディアの配信記事から読み解く最終シナリオはこうだ!
ロイターの配信では武藤氏が本命とのことだが・・・ 〔PHOTO〕gettyimages

 2月15日午後、内閣官房幹部との昼食中に電話があった。某株式市場関係者は忙しげな声で以下のように伝えてきた。「ロイター通信が午後1時過ぎ、『政府筋によると、日銀総裁人事は武藤敏郎元財務事務次官を軸に最終調整に入った』と配信、株価は直ちに250円安になりました」---。

 これには、少し説明が必要である。筆者は主宰する情報誌『インサイドライン』を始め、連載するコラムなどでこれまで日本銀行の次期総裁人事に関する記事を書いてきた。

 下馬評に上っている7人の有力候補---①武藤元財務事務次官(現大和総研理事長・1966年旧大蔵省入省)②岩田一政日本経済研究センター理事長(元日銀副総裁・経企庁出身)③岩田規久男学習院大学教授④伊藤隆敏東京大学教授(元副財務官)⑤竹中平蔵慶応大学教授(元総務相)⑥黒田東彦アジア開発銀行総裁(元財務官・67年)⑦渡辺博史元財務官(現国際協力銀行副総裁・72年)---の中で、筆者の見立てとして「本命:武藤、対抗:岩田(一)、大穴:岩田(規)」と記していたのだ。

 水面下での日銀総裁人事を巡る駆け引きが安倍晋三内閣内部、財務省と日銀執行部、有力候補間で熾烈さを増していた先週、安倍首相の精神的支柱であり後見人役でもある中原伸之元日銀審議委員・元金融庁顧問と勝栄二郎前財務事務次官(現インターネットイニシアティブ特別顧問・75年)からそれぞれ長時間話を聴く機会があった。

 もちろん、オフレコ懇談なので、その内容を明かすわけにはゆかない。だが、敢えて一点だけ紹介すれば、中原氏が「武藤総裁だけは絶対に認められない」と言ったのに対し、勝氏は「武藤氏にしか日銀統治はできない」と言ったのである。どちらの"御託宣"を受け入れるのかではなく、その他にも多くの関係者の取材を重ねてきた中で先述の見立てとなったのだ。

ロイター、WSJの配信はタイミングが良すぎる

 その間、こういう話があった。「武藤総裁」になればかつてのように財務省出身者と日銀生え抜きのたすきがけ人事に後戻りすることになり、株式市場はネガティブに反応して株暴落もあり得る、と。一方、日銀内部のマネージメント能力を勘案すれば、その見方は真逆であり、「武藤総裁」は必ずマーケットから好感される、と。

 確かに、福田康夫政権下の08年春、当時の民主党の反対で政府の「武藤総裁・伊藤副総裁」案を断念せざるを得なかったことから、それ以来、「武藤総裁」は財務省の悲願であった。長期政権を目指す安倍首相も「ザ・霞が関」の異名を取る財務省との良好な関係の必要性を考えると、「武藤総裁・伊藤副総裁」案に加えて、今や日銀プロパー副総裁維持を至上命題とする白川方明現総裁が希望する中曽宏理事を副総裁に昇格させることで決着させるのではないか、と筆者は見立てたのである。

 ことはどうやらそう簡単ではないようだ。政府・政権党の重要人事では、しばしば情報をリークして潰すという手法が採られる。実は、この日の午前中、件のロイター通信配信前に、米紙ウォールストリート・ジャーナル(電子版)が「日銀総裁人事を巡り、安倍首相と麻生太郎副総理・財務金融相との間で対立がある」と報じていたのである。

 タイミングが良すぎる---これが永年にわたって権力闘争を取材してきた筆者の本能に警告音を発したのだ。「学者には日銀を統治できない」と発言してきた麻生副総理が依然として究極の野心を抱く財務大臣として財務省の悲願をバックアップするのは当然のことだ。

 筆者が描くシナリオはこうである。もともと財務事務次官OBの日銀総裁指名に消極的だった安倍首相の想いを忖度して、15日からモスクワで開催されているG20財務相・中央銀行総裁会議中に「武藤氏を軸に最終調整」という速報を流させた上で、さらに政府代表としてソウルでの朴槿恵韓国大統領就任式に出席する25日に「岩田(一)総裁・渡辺副総裁・中曽副総裁」の政府案を国会に提示しもらう・・・。「不在中にやられちゃったよ」というエクスキューズをするということだ。

 これは言うまでもなく、筆者の勝手な見立てである。がしかし、十分にあり得るシナリオだと思っているが、来週末までには恐らく『日本経済新聞』あたりが決め撃ちの人事予測記事を一面トップに掲載するはずだ。

この続きは、プレミアム会員になるとご覧いただけます。
現代ビジネスプレミアム会員になれば、
過去の記事がすべて読み放題!
無料1ヶ月お試しキャンペーン実施中
すでに会員の方はこちら