EU予算案ついに可決! 脱退をチラつかせ支出削減をゴリ押しした英キャメロン首相の台頭はEUに構造変化をもたらすか!?
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 2月9日、EUの次期の予算案がやっと決まった。予算総額は1兆900億ユーロ! EUは7年の枠で予算を決めるので、今回決まったのは14年から20年までの分だ。

 27ヵ国の首脳がこの予算案を承認するのに27時間かかったというから、予想されたとおりの難産だった。難産になった一番大きな理由は何かというと、EUが普通の国家のような、本来の税収を持たないことだ。

 収入と言えば、関税収入、消費税収入、EUの法律に違反した場合の罰金収入だけで、それ以外はすべて、加盟国からの拠出金で賄わなければいけない。拠出金で賄っている分は、全歳入の69%だ。当然のことながら、どの国もなんだかんだと理屈をつけて、自分たちの拠出をなるべく減らそうと努力する。

 一方、歳出の方では、自国により多くの補助金が回ってくるように、あの手この手を使って画策する。交渉は熾烈だ。ヨーロッパは一つという理念の下に作られ、皆で協力するはずだったEUだが、これを見ていると、ヨーロッパはちっとも一つにはなっていない。その反対で、まさにEUの舞台において、各国のエゴがむき出しでぶつかり合っているように見える。理想と現実は限りなく遠い。

支出削減と拠出金66%免除を維持したイギリス

 EUの問題は、比較的豊かな国から貧しい国へお金が流れるという構造がしっかり定着してしまっていることだ。しかも、与える国は、ドイツ、イギリス、スウェーデン、オランダなどわずかで、あとは、実入りの方が多い国がほとんど。それらの国々にとっては、EUからの補助金はすでに重要な収入源の一つだ。しかも、貰うのが当然という空気すらできあがってしまっている。

 今回できた予算案で画期的なのは、支出が前期に比べて3%減っていることで、これはEU始まって以来の快挙だ。先々週も書いたが、予算の縮小やEUの構造改革を強く求めていたのが、イギリスのキャメロン首相だった。

 キャメロン首相は、保守党内の反EUタカ派に突き上げられ、間一髪というところまで追いつめられていた。イギリスでは、保守派だけではなく国民のあいだでも、お金が掛かるばかりなのでEUなど脱退してしまえ、という意見が多数派だ。しかし、アメリカは、イギリスをパイプに、EUの政策に影響力を行使しようと思っているので、イギリスをEUから脱退させたくはない。

 そこでキャメロン首相は苦肉の策として、今回の会議でイギリスの願うような条件を通し、それを見てから、EUに残るか、それとも脱退するかを国民投票で決定すると宣言していた(前々回記事参照)。もちろん非難轟轟。他の加盟国から見れば、キャメロン首相のやっていることはEU破壊工作だ。

 しかし、結果としてイギリスは、3%とはいえ支出は縮小できたし、サッチャー首相以来イギリスがあやかっている拠出金の66%免除も、そのまま保持できることになったのだから、これはキャメロン首相の大手柄だ。勝てば官軍、国内での評価も少しは上昇するだろうし、EU内でのイギリスの地位も微妙に変化する可能性がある。

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